研究開始時の研究の概要 |
本研究では、申請者がこれまで開発してきたルチル型の窒素/フッ素共ドープ酸化チタン(TiO2:N,F)光触媒の知見を発展させ、酸化チタン(TiO2)前駆体に着目した合成の最適化とそれにより得られるTiO2:N,Fの光触媒活性の向上に寄与する因子を明らかにすることを目的とする。粒径を制御したTiO2やナノシート状のTiO2を合成し、所属研究室で行われてきた粒子サイズ・形態の制御、多形効果の知見を融合することにより、TiO2:N,Fの物性と光触媒活性の関係を明らかにする。これにより、3種複合アニオン化合物における光触媒活性向上に必要な新たな指針を確立し、ひいては高活性光触媒の創出に取り組む。
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研究実績の概要 |
昨年度までの検討結果をもとに、微粒子のアナタース型およびルチル型の窒素/フッ素共ドープ酸化チタン(TiO2:N,F)を合成し、その光触媒機能の比較を行った。それぞれの多形において合成条件を最適化したところ、二段階励起型水分解系の酸素生成光触媒としては、ルチル型の方が、わずかではあるが高い活性を示すことがわかった。そこで、ルチル型TiO2:N,Fに対する助触媒検討を行い、Zスキーム水分解系のさらなる活性向上を目指した。 また、昨年度までのTiO2:N,F合成の知見をもとに、代表的な光触媒材料であるGaN-ZnO固溶体と類似の構造を有するGa1-xZnx(N,O,F)を823 Kのアンモニア雰囲気下での加熱により合成することに成功した。これは従来のGaN-ZnO固溶体のアンモニア窒化法による合成温度(> 1073 K)よりも圧倒的に低い温度である。その結果、従来問題となっていたZnの揮発を抑制することに成功した。これは、TiO2:N,Fの検討において見出したフッ素による窒化促進効果に由来すると考えられる。このように、フッ素を用いた窒化反応の促進は、酸窒化物の組成のコントロールをより容易にすることを実証することに成功した。本手法は、不安定な準安定相の合成にも応用できることが期待される。 以上のように、本年度はTiO2:N,Fの多形効果、助触媒効果をこれまでに開発した微粒子TiO2:N,Fを用いて検討した。その上で、昨年度までに発見した窒素/フッ素共ドープ効果の知見を活かして、新たな酸窒化物合成法についての研究も実施した。これらの成果は、既に学会・論文誌等で発表しており、未発表の成果についても順次、学会発表/論文投稿を通して発表する予定である。
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