研究課題/領域番号 |
19K00007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
後藤 弘志 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (90351931)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 人格 / 徳倫理学 / 洋書漢訳 / 英華辞典 / 万国公法 / 戦争責任 / トマス・ヒル・グリーン / 漢訳洋書 / 戦争責任論 / 西洋学術用語の翻訳 / 英華字典 / 倫理学 / 徳 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、まず、近代初頭の日本における人格概念の受容を可能にした要因を、受け入れられた西洋思想と受け入れの土壌となった近世日本思想との接点としての徳倫理学的志向の中に見出し、個的人格と社会・国家との関係主義的な理解を、訳語「人格」の選定者井上・中島に留まらない、明治・大正期の共通特徴として描き出す。次に、朝永三十郎、紀平正美、阿部次郎らの人格論を取り上げて、この第一列の共通特徴の濃淡を描き出すとともに、【原子論→関係主義→原子論】という第二列の個別的特徴を明治初頭以来の時系列に沿って解明する。
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研究成果の概要 |
中国語にも日本語にも対応語を見出すことのできないPerson概念受容の困難さは、それが神学的次元を持ち、「人間」概念とは内包と外延を異にすることにある。その訳出には中国における洋書漢訳と、日本における蘭学・英学という二つのルートがある。この両者が幕末・明治の日本において合流し、最終的に「人格」という訳語として定着する。本研究は、この二つのルートうち、中国における漢訳洋書第二期の英華辞典類と、第三期の『万国公法』におけるPerson関連訳語を系統的に比較分類し、現代の法律用語にその痕跡を見出すとともに、神学的次元をも加味した「人格」という訳語の成立までの道のりのはるかに遠いことを示した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
西洋思想の根幹をなしながら、中国語にも日本語にも対応語を見出すことのできないPerson概念の受容の経緯を、日本の西洋学術用語翻訳導入に影響を及ぼしたとされる中国の漢訳洋書や日本の蘭学・英学の系譜にまで遡って詳細に辿った研究は皆無である。また本研究の意義は、同概念受容の疑似身分制的/徳倫理学的な土壌に着目したことにある。その出口は、こうした受容のために日本の哲学界は先の戦争を準備促進した、あるいはそれに歯止めをかけることができなかったのではないか、さらには戦後においても、建前としての啓蒙主義的政治文化の定着の陰で負の影響が及んでいるのではないかについての反省的考察の材料を提供することにある。
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