研究課題/領域番号 |
19K00029
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東北大学 (2022) 富山大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
澤田 哲生 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60710168)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 現象学 / 身体 / メルロ=ポンティ / リシール / クラストル / 人類学 / ハイデガー / 発達心理学 / 精神病理学 / 精神分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、モーリス・メルロ=ポンティ(1908-1961)とマルク・リシール(1943-2015)という20世紀を代表する二人の現象学者の思想を研究することで、現象学という哲学領域の身体理論に新たな知見をもたらすことを目的としている。とりわけ、子どもや患者の身体を欠落的な側面からもっぱら検討してきた旧来の身体概念の刷新することが、本研究の具体的な目標となる。 同時に、本研究はこの二人の現象学者が参照した発達心理学、精神病理学、教育学の文献を検討し直すことで、これらの学問領域における既存の身体概念に新たな観点を提供し、対話の機会を創出することも目的としている。
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研究実績の概要 |
2022年度は本事業4年目であった。本務校が富山大学人文学部から東北大学大学院教育学研究科に変更となった。7月にフランスのスリジー国際文化研究センターで開催された国際シンポジウム「レヴィナスとメルロ=ポンティ 身体と世界」で、フランス語による研究発表を行った。海外の研究者たちも肯定的な反応を示してくれ、本研究テーマである「身体」に関して、メルロ=ポンティの身体論の新たな可能性を提示することができた。これは本研究の集大成の一部分を構成する。来年度に論文が公刊される予定である。 論文に関して、静岡哲学会の学会誌『文化と哲学』に「空想・神話・共同体――マルク・リシールとピエール・クラストル」という論文を発表した。この論文では、人類学者ピエール・クラストルの仕事をマルク・リシール現象学の観点から検討し直した。その結果として、クラストルが観察した南米インディアンたちの身体的な営為(狩猟、語り、埋葬、等々)のなかに、「空想(Phantasie)」と呼ばれる現象の展開が確認された。これにより、本研究のテーマである「身体」を「知覚」という実在的な水準でなく、非実在的な水準から考察することが可能となり、研究成果の幅を広げることが可能となった。 その他、2017年に『中井久夫 精神科医のことばと作法』に寄せた文章(「中井久夫『分裂病と人類』」)が、新装版(『中井久夫 精神科医が遺したことばと作法』)に再録されたが、これは一般向けの仕事である。同じく一般向けの仕事として、対人援助グループ(塩飽海賊団)が企画した「心理アセスメントから芸術療法へ、芸術療法から芸術活動へ :フランス哲学絵画論にもとづいて作品を眺める」(2023年3月10日)において、医療当事者の芸術実践とそこから生まれた作品に関するコメンテーターを担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本事業において国際シンポジウムを計画していたが、これまで新型コロナ・ウィルスの問題により実現できないままであった。2022年度は、この問題があるていど落ち着いたので、マルク・リシールに関する国際シンポジウムのあらためての開催を企図した。しかしながら、本事業初年度(コロナ前)に国際シンポジウムに意欲的であったヴッパタール大学のアレクサンドル・シュネル教授も、パリに在住のサシャ・カールソン氏も、コロナが落ち着いて間もない渡航に難色を示し、シンポジウムの開催は実現しなかった。この状況は当分変わりそうにないので、本事業におけるシンポジウムの開催は断念した。その代替え措置として、研究に必要な文献などをさらに充実させ、それらを精査・分析することに集中した。 また、本務校が変わったことにより、新たな教育・研究環境および生活環境への適応に相当な時間がかかった。それにより、研究のインプットに大きな支障はなかったものの、アウトプットにかける時間を十分に確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現状において国際シンポジウムを断念させざるえないので、来年度はその分の経費を自分の研究の各学会や学術機関でのアウトプット活動に使用することで、研究を推進する。
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