研究課題/領域番号 |
19K00042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
櫻木 新 芝浦工業大学, デザイン工学部, 教授 (90582198)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 記憶の哲学 / エピソード記憶 / 集合記憶 / 傾向 / 忘却 / 記憶知 / コーパス調査 / 記憶概念 / アンケート調査 / 夢の記憶 / 記憶の帰属条件 / 記憶 / 概念分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「記憶が何であるか」ではなく、「『記憶』とは何を意味するのか」の探求へ 向けられたものである。心理学は「記憶」がどう機能し、どのように我々の身体において実現されるかを明らかにしてきたが、そもそも「記憶」や"Memory"という表現が何を意味しているのかという概念的な問いに対しては冷淡である。他方において、哲学における概念分析は伝統的に、英語話者の直観に頼るという限界を示してきた。これらの課題に対してコーパスやアンケート調査を積極的に活用することで、分析哲学の限界を補完しつつ、本研究は日常的な「記憶」概念の解明にアプローチする。
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研究実績の概要 |
2023年度は当初の予定では最終年度として前年度までの結果等で得たフィードバックを踏まえた最終的な結果報告を予定していた。しかし、主としてコロナ禍のために前年度までの計画に遅れが生じたため、22年度までに後ろ倒ししていた課題に優先的に取り組んだ。 23年度の主たる研究成果として、前年度投稿したRememberおよびForgetと記憶知の問題の問題に関する論文が修正の上で無事採択され出版された。そのほか、エピソード記憶の哲学的諸問題を概観する論文を共同研究者と執筆・投稿した。こちらは24年度中に出版される予定である。 23年度に行った口頭発表については、前年度からの成果を踏まえた研究報告を国内外の学会や国際ワークショップ等で計5件(国内2件、海外3件)行った。 集合記憶の帰属条件について22年度までに行った比較実験の結果を共同研究グループ内で検討した結果、論文執筆は見送ることとなった。他方で、集合記憶については概念的な分析の過程を国内学会で報告したほか、国内の研究者と連携し集合的エピソード記憶の倫理的含意を主題とする研究プロジェクトを立ち上げた。前年度まで取り組んできた記憶表現の叙実性についての研究をさらに推進し、一部についての口頭発表を行った。そのほか、記憶の哲学についての新しい国際共同研究、記憶表現の傾向解釈、Vagueな記憶についての検討を進め、一部の成果を学会等で報告しフィードバックを得た。これらの一部は24年度以降論文にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は前年度までの課題を一部後ろ倒しして以下に取り組んだ。(1)これまでの成果についての総合的な検討・考察、(2)フィードバックやこれまでの考察を踏まえたさらなる文献調査や実験の検討、(3)これまでの成果や調査・実験結果の積極的報告。 (1)これまで国際共同研究グループで行った英語と日本語話者の集合記憶の帰属に関する複数の実験結果をグループ内で検討したが、仮説を十分に支持する実験結果を確認できなかったと結論し、これ以上の研究は見送ることとなった。 (2)前年度までの日英両語の記憶表現の叙実性(factivity)についての研究をさらに進め、特にKnowledge Firstアプローチの観点から検討した。そのほか記憶の集合帰属の研究から派生し、集合的エピソード記憶のもつ倫理的な含意に注目した共同研究プロジェクトと上記(1)の共同研究者の一部と経験的手法を活用した記憶の哲学の歴史的な変遷についての国際共同研究プロジェクトを新たに立ち上げた。 (3)前年度投稿した忘却と証拠の問題に関する論文が修正の上で無事採択され、出版された(Successfully remembering a belief and the problem of forgotten evidence, Philosophy and the Mind Sciences Vol.5)。エピソード記憶の哲学的問題をサーベイした論文を共同研究者と執筆し、投稿した。記憶表現の叙実性についての報告(日本論理哲学会第27回大会)、集合的エピソード記憶についての概念的な整理を主題とした報告(日本イギリス哲学会第48回研究大会)、記憶表現の状態用法に関する傾向解釈に関する報告(日本哲学会第82回大会)、Vagueな記憶と構成主義的な記憶理解との関係に関する報告(Simulationism 2023)をそれぞれ行った。
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今後の研究の推進方策 |
23年度で終了する予定を1年後ろ倒しし、24年度は最終的な成果のとりまとめに注力する。 すでに口頭発表等で十分なフィードバックを得た上で、一定の論考に至った研究については論文の執筆に取りかかり、24年度中に投稿する予定である。 そのほか、これまでの成果を包括的に報告しそれぞれに対するフィードバックを得るために、関連領域の研究者を複数招いた国際ワークショップを国内で主催することを計画している。そのほかにも、23年度に立ち上げた記憶の哲学の国内での研究グループで複数のワークショップを企画しており、これまでの成果の一部はそこで報告し、フィードバックを得る予定である。
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