研究課題/領域番号 |
19K00065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
菅野 博史 創価大学, 文学研究科, 教授 (50204805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 『大般涅槃経集解』 / 白鶴美術館 / 中道 / 空 / 三種中道 / 智顗 / 吉蔵 / 廬山慧遠 / 鳩摩羅什 / 僧肇 / 仏性 / 仏身常住 / 『涅槃経』 / 涅槃経疏 |
研究開始時の研究の概要 |
第一に、『大般涅槃経集解』を資料として、仏性、仏身の常住、仏と衆生の感応関係、二諦(真諦・俗諦)、教判思想などの問題について、南朝の仏教思想を分析することを目指したい。これは従来の南朝仏教学の研究の空白を埋めるとともに、中国仏教の基本的な特徴である現実世界に対する肯定的な世界観の解明にもつながる意義を持つと考える。 第二に、白鶴美術館から写本の写真撮影・閲覧の許可を与えられているので、それを遂行し、さらに聖語蔵本を参照することによって、『大般涅槃経集解』の新しい校訂本を作成する。これは、思想研究にとっても重要な意義を持つと考える。
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研究実績の概要 |
コロナ禍のために2019年8月以来中断していた、公益財団法人白鶴美術館への出張を2023年9月6日 ~ 2023年9月8日に再会し、白鶴美術館所蔵の『大般涅槃経集解』の写本(国宝)に対する研究成果の献呈とその説明、及び今後の研究の打ち合わせをした。2024年秋の特別展示において、私の研究している『大般涅槃経集解』の展示がお行われるそうなので、協力を申し出た。なお、「『大般涅槃経集解』巻第一~三十までの校勘」(張文良・賈学霄との共著,『創価大学人文論集』35,2023.3,pp. 55-63)によって、『大般涅槃経集解』の前三十巻の校勘は終わっている。巻第三十一以降の校勘を進めているが、まだ完成していない。2024年度中に完成する予定である。 『大般涅槃経集解』に対する思想的研究としては、2023年9月3日に、日本印度学仏教学会において(龍谷大学、オンライン開催)、『大般涅槃経集解』における空・有・中道の問題と題して研究発表をし、同名の論文を『印度学仏教学研究』72-1,2023.12,pp. 295-288[L]に掲載した。この研究は、『大般涅槃経集解』7に収録されている僧亮、僧宗、宝亮の三人の注釈に焦点を当てて、彼らの『涅槃経』哀歎品、長寿品、四諦品、梵行品、徳王品に対する注釈を取りあげ、空・有・中道の問題に対する解釈を分析したものである。 また、『大般涅槃経集解』の校勘にご協力いただいている中国人民大学の張文良教授と共著で、中文による「白鶴美術館《涅槃経集解》写本再発現及研究」を『佛学研究』2023年総第五十期(2023.6,pp. 1-12)に発表した。これは、『大般涅槃経集解』の全体像の情報を、中国の学者へ伝えることを目的としたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために2019年12月を最後に中国への出張を中断していたが、幸い昨年、10月27日~11月3日、中国に出張できた。そこで、『大般涅槃経集解』の校勘にご協力いただいている中国人民大学の張文良教授と打ち合わせすることができた。「『大般涅槃経集解』巻第一~三十までの校勘」(張文良・賈学霄との共著,『創価大学人文論集』35,2023.3,pp. 55-63)以降の『大般涅槃経集解』の前三十巻の校勘は終わっているが、現在取り組んでいる巻第三十一以降の校勘がまだ完成していない点は、やや遅れていると自己評価している。 なお、『大般涅槃経集解』に関する学会発表、二篇の論文を執筆したので、この方面に関しては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今年の秋には、公益財団法人白鶴美術館の特別展示において、国宝の写本である『大般涅槃経集解』を取りあげると聞いているので、出張を予定しているが、専門家として協力を求められれば、ぜひ協力したい。「『大般涅槃経集解』巻第一~三十までの校勘」(張文良・賈学霄との共著,『創価大学人文論集』35,2023.3,pp. 55-63)によって、『大般涅槃経集解』の前三十巻の校勘は終わっているが、巻第三十一以降の校勘を完成したい。 『大般涅槃経集解』に対する思想的研究としては、2024年9月7日~8日(駒澤大学、対面開催)に開催される日本印度学仏教学会において、「『大般涅槃経集解』における中道の問題」と題して研究発表をする予定である。 道安以降、東晋時代には般若学の隆盛があった。その後、大乗の『涅槃経』が翻訳されると、意外にも中国仏教思想の主流は、急速に般若学から涅槃学へ移行した。そのような変化・移行が起こった理由として、先行研究のなかには、廬山慧遠とその周辺(例えば、僧肇の『肇論』や慧叡[僧叡]『喩疑』など)において、般若性空から涅槃妙有への思想的転換がすでに準備されていたからであるという指摘がある。このような仮説を踏まえて、本発表では、このような空と有、そして中道の問題を、大乗の『涅槃経』を受容した中国仏教界が、『涅槃経』を通して、どのように解釈したのかを考察したい。『南本涅槃経』本体と、道生以降の六朝時代の仏教者の『涅槃経』注釈を多数収集し、梁代に編纂された『大般涅槃経集解』に示される「中道」の概念を取りあげる。 今回は、これまでの研究を踏まえて、『南本涅槃経』巻第25-30師子吼菩薩品、巻第31.34の迦葉菩薩品に出る中道と、それに対する『大般涅槃経集解』の解釈を考察する予定である。またこの研究発表と同名の論文を、『印度学仏教学研究』に掲載予定である。
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