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イスラームにおける出生前診断の総合的研究:選択的中絶と障害者をめぐる議論を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 19K00077
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分01030:宗教学関連
研究機関新潟大学

研究代表者

青柳 かおる  新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (20422496)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワードイスラーム / 出生前診断 / 婚前スクリーニング / 人工妊娠中絶 / 結婚 / サラフィー主義 / イラン / サウジアラビア / 婚姻 / 出産 / 障害者 / ガザーリー / 生命倫理 / 同性愛 / 弱者 / ロトの民 / 選択的人工妊娠中絶 / 中絶 / 女性
研究開始時の研究の概要

出生前診断とつながりのある問題の中でも、とくに選択的人工妊娠中絶の可否や、障害者とその家族を取り巻く状況といった問題について、イスラームの議論を検討する。古典イスラーム思想を踏まえた上で、現代のイスラーム文献や医療現場の報告などを読解し、イスラームにおける出生前診断の議論と実践を総合的に解明する。

研究実績の概要

イスラームにおける出生前診断の可否および胎児に深刻な障害が確定した場合の中絶の可否、さらに障害者、弱者の現状といったテーマについて研究を進めてきたが、2023年度は、イラン(シーア派)とサウジアラビア(スンナ派)における出生前診断、婚前スクリーニングを取り上げた。中東には、近親婚に伴うサラセミアという遺伝性疾患の患者が多いとされており、婚前スクリーニングが行われている。
スンナ派のファトワー(法的回答)によると、出生前診断はイスラーム法的に合法である。胎児に深刻な障害がある場合、中絶は可能であるが、1)入魂前(受精から120日まで)であることと、2)深刻な障害があることといった正当な理由があることが条件である。ただし具体的な疾患名については不明であった。障害をもつ子どもを産み育てることは神の意志であるとして推奨するファトワーも見られた。出生前診断を受けたサウジアラビアの女性たちへのインタビュー記事も参照し、診断で胎児の障害が確定し中絶した女性たち、産み育てた女性たちの声を取り上げた。
シーア派においては、胎児が障害をもつという理由だけでは、いかなる段階でも胎児を中絶することは許されないとするファトワーが出ているが、遺伝性疾患に関しては、中絶を可能とするファトワーが発出された。2005年には重症型サラセミアや血友病以外にも重篤な胎児の中絶が許可されている「選択的人工妊娠中絶法」が可決された。
また現代のイスラーム思想において大きな影響力を持っているサラフィー主義について、古典時代のガザーリーの哲学的要素(存在一性論の影響など)に対する批判を取り上げた。そして現代の法学者が根拠とするサラフィー主義の先駆者である中世のイブン・タイミーヤ、ザハビーによる批判を分析した。さらに出生前診断、人工妊娠中絶といった問題を含む、総合的な生命倫理の著書の執筆を開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イラン(シーア派)とサウジアラビア(スンナ派)における出生前診断、婚前スクリーニングに関するファトワーをまとめ、先行研究も参照しながら、胎児に遺伝性疾患が生じる可能性のある当事者たちの声も紹介することができた。また現代のサラフィー主義者のガザーリー批判を取り上げ、現代イスラーム思想の一端を明らかにできた。以上については2本の論文を発表できた。さらに生命倫理をテーマとする著書の執筆も開始した。

今後の研究の推進方策

生命倫理をテーマとする著書の執筆を進めるとともに、イスラーム世界のマイノリティ(とくに同性愛者)の研究にも発展させていきたい。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うちオープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 現代のサラフィー主義者によるガザーリーの哲学的要素に対する批判――中世のイブン・タイミーヤとザハビーによる批判に基づいて2024

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 24 ページ: 29-50

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] イランとサウジアラビアにおける出生前診断と婚前スクリーニングの諸相2023

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      人文科学研究

      巻: 153 ページ: 1-20

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] コロナ禍におけるムスリムの宗教実践――金曜礼拝(集団礼拝)に関するファトワー分析を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 23 ページ: 1-20

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ガザーリー「婚姻作法の書」に関する『宗教諸学 の再興』と『幸福の錬金術』比較研究覚書2022

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 22 ページ: 1-24

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] イスラームにおける障害者に関する議論の諸相2021

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      人文科学研究

      巻: 149 ページ: 1-20

    • NAID

      120007181553

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「イスラームの同性愛における新たな潮流――ゲイのムスリムたちの解釈と活動」2021

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      『比較宗教思想研究』

      巻: 21 ページ: 1-24

    • NAID

      40022554939

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「イスラームにおける同性愛――伝統的解釈を中心に 」2020

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      『人文科学研究』

      巻: 147 ページ: 1-19

    • NAID

      120007177233

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「ガザーリー「婚姻作法の書」にみられるガザーリーの夫婦観――コーラン4章34節の解釈にみられる役割分担を中心に」2020

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      『比較宗教思想研究』

      巻: 20 ページ: 1-20

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「イスラームにおける出生前診断――スンナ派を中心に」2019

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 雑誌名

      『人文科学研究』

      巻: 145 ページ: 1-16

    • NAID

      120006850783

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] 「イスラームの「聖典」と<性別>」2019

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 学会等名
      2019年イスラーム・ジェンダー学科研公開シンポジウム「イスラーム×ジェンダー――「境界」を生きる/越える」
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 19章「シーア派における一時婚――スンナ派との論争と現代における実践」森本一夫・井上貴恵・小野純一・澤井真編『イスラームの内と外から――鎌田繁先生古稀記念論集』 382-4022023

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 総ページ数
      668
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 「生殖医療」イスラーム文化事典編集委員会編『イスラーム文化事典』264-2652023

    • 著者名/発表者名
      青柳かおる
    • 総ページ数
      714
    • 出版者
      丸善出版
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] https://researchmap.jp/ruco

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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