研究課題/領域番号 |
19K00079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
拓 徹 (高橋 徹 / 拓徹) 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 助教 (90795626)
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研究分担者 |
小倉 智史 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (40768438)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | カシミール / イスラーム / セキュラリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではカシミールを事例として、中世から現代にかけてのセキュラリズムとイスラ―ムの実態を文学・歴史・政治史料から明らかにする。とくに、中世カシミール文学を代表し、現在のカシミールで「カシミール文化」の象徴と考えられている二人の詩人聖者の詩と、その現代的解釈の政治性に着目する。この現代的解釈の軸となっているのが、現行の「セキュラリズム」「イスラーム」「宗教」などの概念の近代性である。こうした分析の成果を踏まえ、カシミール紛争におけるセキュラリズムとイスラームの対立の問題構成を明確化し、紛争解決の一助とする。
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研究実績の概要 |
今年度は、本プロジェクトの総括にあたる国際ワークショップ"Cultural Politics on Secularism and Islam in Kashmir: Reading Lal Ded and Nund Rishi"の準備に注力し、これを2024年3月16日にオンライン形式で開催した。 国際ワークショップでは、研究代表者および研究分担者の他、アメリカから3名、インドから2名の研究者が研究発表を行い、カシミール文化の基盤を作ったとされる詩人聖者ラール・デードおよびナンド・リシ(14~15世紀)について、発表者以外のオーディエンスを含めて質疑応答と議論が行われた。研究代表者の拓によるイントロの後、第1部では、小倉(研究分担者)およびDean Accardi (米Connecticut College)がそれぞれ18世紀、16世紀における(これら詩人聖者たちの)解釈について、拓が1940年代の詩人アーザードによる解釈について考察し、続いてHafsa Kanjwal (米Lafayette College)が1950~60年代カシミールにおける文化政策のあり方について考察した。第2部では、Abir Bazaz (印Ashoka University/研究協力者)がナンド・リシのテキストから従来とは異なる宗教境界の読みを提示し、Sonam Kachru (米Yale University)がラール・デードの詩の新たな英訳と解釈を提示し、カシミールにおけるカシミール文学研究の泰斗であるShafi Shauq (印Kashmir University)がナンド・リシ研究全般について見解を述べた。ディスカッションにおいては、とくにShauq氏と他の発表者たちの間で盛んに質疑応答が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでコロナ禍などにより総括のコンフェレンス/ワークショップの開催が延期され続けてきたが、今年度にようやく実現した。規模的には当初の計画より縮小されたものの、テーマを絞って日・印・米の(専門領域的には多様な)研究者たちが議論することによって、研究対象である中世カシミール詩人聖者たちの歴史的「解釈」について、その幅と多様性が具体的に可視化されるという成果があった。これまでカシミール文化のイコンとしてそのイメージが固定化されるきらいがあったこれら詩人聖者たちをめぐって、その歴史的解釈がじつは大きな多様性に満ちていることを明示するのが本プロジェクトのそもそもの狙いであり、今回の国際ワークショップにおいてこの目的が大枠で達成された。
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今後の研究の推進方策 |
国際ワークショップにおいて示された「多様性」は、今後各自の研究に還元させて行く方針である。これは、各発表者の考察内容が、論文というより単著に向いた性格のものであることがワークショップを通じて感じられたことに由来する。研究代表者の拓の場合、これまで研究してきた1970~80年代における「カシミール文化」再定義/捉え直しの現象について理解を深めようとすると、今回ワークショップで発表した1940年代の事情、さらにそれ以前の20世紀初頭の事情と併せて考えることで、ようやく「近現代」におけるカシミール文化再定義の輪郭が見えてくるものと思われる。そして、これらすべての要素をまとめると「単著」とならざるを得ない。同様の事情が研究分担者ほかのワークショップ発表者についても存在するため、今後は本プロジェクトの成果を各々の単著にまとめて行く方針を採ることを考えている。
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