研究課題/領域番号 |
19K00082
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山崎 亮 島根大学, 学術研究院人間科学系, 教授 (40191275)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 大仏空 / 「青い芝の会」 / 障害者自立思想と宗教 / 横塚晃一 / 横田弘 |
研究開始時の研究の概要 |
横塚晃一と横田弘らを中核メンバーとする「青い芝の会」の'70年代のラディカルな運動は、障害当事者による主体的な思想的営為の嚆矢であるという点で、同時代のアメリカにおける障害者自立生活運動にも匹敵する。障害者の自己肯定と社会への批判的視座を基軸とするその独自の思想の成立には、'60年代後半、無名の仏教者であった大仏空が主催し横塚と横田も参加した脳性マヒ者の生活共同体=「マハラバ村」での思想体験が大きく関わっている。 本研究では、従来、ほとんど顧みられてこななかった大仏の宗教思想を解明し、「青い芝」へのその影響を検討することによって、日本における障害者自立思想の淵源と射程を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究は、大仏空(1930-84)の宗教思想を解明し、日本脳性マヒ者協会「青い芝の会」(以下「青い芝」)の障害者自立思想に対するその影響を構造的に明らかにすることを目的としている。 この目的の達成に向けて、本研究では関連資料の探索・収集に努めてきた。現在では稀覯本になっている『青い芝』や『あゆみ』(「青い芝」神奈川県連合会)、文芸同人誌『しののめ』等の雑誌類を探索し、さらには大仏や横田弘の蔵書も調査した。この結果、大仏の最初期の宗教思想が集約された小冊子『聖道 念仏義抄文』や、雑誌『親鸞』に掲載された「最大の念仏者 キリスト」、さらには横塚晃一の主論文「ある障害者運動の目指すもの」に大仏が註記したパンフレット『CP解放運動のめざすもの』等、これまで知られていなかった大仏の著述をいくつか収集し、また彼の蔵書目録も作成することができた。他方で、横塚や横田を中心とした「青い芝」の70年代の運動・思想を分析するために必要な一次資料も多数収集し、また折本昭子や若林克彦、二日市安等、60~70年代の「青い芝」当事者の証言も検討している。2021年度は、これらの資料を整理・翻刻する作業を中心に研究を進めた結果、「Ⅰ基底としての「宗教」」、「Ⅱ障害者解放に向けて」、「Ⅲみずからを語る」、「Ⅳ歴史へのまなざし」、「Ⅴ晩年の思索」という5部構成の「大仏空著作集」の構想を立て、このうちの「Ⅰ基底としての「宗教」」を、詳細な解題を付して公表することができた。 本年度は、横塚ら「青い芝」の運動に触発されて大仏自身の「障害者解放思想」が展開される諸論考を「Ⅱ障害者解放に向けて」として、また、大仏の人となりや思想をリアルに読み取ることができるロングインタビューをその付録も含めて「Ⅲみずからを語る」として、詳細な解題を付して公表した。大仏の思想を解明する上できわめて重要な資料を公にできた、と自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記した通り、大仏の論述を中心とした関連資料の探索・収集という点に関しては、所期の目標を一定程度達成できたと考えるが、その全体を公表するには至っていない。また、そのテクストを活用して大仏の宗教思想の全貌を解明し、横塚や横田ら「青い芝」の障害者自立思想に対する影響を構造的に明らかにするという点では、公表した「大仏空著作集」の解題において、部分的に考察を試みているものの、いまだ不十分である。コロナ禍による調査活動の制約から資料の探索・収集が想定通りには進捗しなかったことが、その最大の要因である。
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今後の研究の推進方策 |
1)収集した資料の翻刻作業を進め、「大仏空著作集」を完成させる。 2)「大仏空著作集」の残り2部を、各論述の成立背景や他の論述との関連を考証する解題を付して公表する。 3)上記のテクストに基づき、大仏の宗教思想の全貌を明らかにし、「青い芝」の障害者自立思想への影響を解明する論考を公表する。
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