研究課題/領域番号 |
19K00084
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
柴山 信二朗 帝京平成大学, 人文社会学部, 准教授 (40572235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | イスラーム / タイ / イスラーム伝統主義 / イスラーム改革主義 / スーフィズム / スンニ派 / シーア派 / 東南アジア / イスラーム思想と実践 / キターブ / ウラマー / 公的イスラーム / チュラーラーチャモントリー / カナ・カオとカナマイ / サラフィーとワッハーブ / サラフ / ワッハーブ / イスラーム神秘主義 / タブリーグ / 思想 / 包摂・摩擦・排除 / カナ・カオとカナ・マイ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はタイにおけるイスラームの新旧グループの特性と多様な思想を明らかにし、対立構造を解明するものである。「カナ・カオ」、「カナ・マイ」の新旧グループは二分法で捉えられる傾向にあるが、各グループには様々なイスラーム思想を持った人々が属している。また、各グループの捉え方が人々により異なるため、両グループを二分法で論じることはタイのイスラームの本来の姿を見誤せることになる。そこで本研究では「カナ・カオ」、「カナ・マイ」についての主観的・客観的な捉え方を調査し、両グループにはどのような思想が包摂され、それらの思想がどのように摩擦を起こし、対立グループから排除されているのかを読み解くことを目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は3回の現地調査を実施した。併せてインターネットを通して継続的に補完的調査を行った。また、研究協力者に依頼し、タイ南部地域マレー・イスラーム世界におけるイスラーム有識者(ウラマー)と著作物(キターブ)に関する資料のマレー語から日本語への翻訳を行った。 2022年度の研究実績は次のとおりである。3回の現地調査およびインターネットを通した補完的調査では、(1)タイ南部および中部・東北部におけるイスラーム改革主義思想と実践(カナ・マイ思想と実践)の広まり、(2)イスラーム伝統主義の潮流(カナ・カオの潮流)及びイスラーム改革主義の潮流とは一線を画するスーフィズムの潮流、(3)タイでは少数派であるシーア派社会における旧グループ(カナ・カオ)と新グループ(カナ・マイ)、について情報を収集した。また、研究協力者に依頼した翻訳資料等により、タイ南部地域マレー・イスラーム世界とその他地域のイスラームの相違について考察を行った。 上述の考察結果の一部を、公益財団法人日本タイ協会機関誌『タイ国情報』雑誌論文において(1)タイにおけるイスラーム伝統主義とイスラーム改革主義、(2)タイにおけるシーア・カオ(古いシーア派)とシーア・マイ(新しいシーア派)、(3)タイにおけるスーフィズムの潮流、として公表した。また、これまでの研究成果の中間報告として、東南アジア学会年次研究大会において、「カナ・カオとカナ・マイはどのようなグループなのか、どのような事象が摩擦・対立の対象になっているのか、また、カナ・マイはどのように変遷してきたのか」について報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で実施できなかった現地調査を2022年度より再開することができた。前年度までにインターネットを通して継続的に行ってきた補完的調査及び研究協力者より提供を受けた情報をもとに、2022年度は現地調査を3回実施した。 2022年8月に実施した第1回目の調査では、主にシーア派の新旧グループ(古いグループを意味するカナ・カオと新しいグループを意味するカナ・マイ)に関してタイ中部および南部にてシーア派モスクを訪問しインタビュー調査を実施した。同8月~9月に実施した第2回目の調査では、バンコクおよびその近郊においてタイのムスリムのマジョリティであるスンナ派における新旧グループ(古いグループを意味しイスラーム伝統主義と捉えられているカナ・カオと新しいグループを意味しイスラーム改革主義と見做されているカナ・マイ)、及び、イスラーム伝統主義者及びイスラーム改革主義者の新旧グループ双方から異なる潮流と見做される傾向にあるスーフィズムの潮流について訪問調査を行った。そして、2023年2月に行った第3回目の調査では、第2回目に行ったスーフィズムに関する調査の追加調査を実施し、併せてタイにおいてイスラームの伝播が比較的新しい東北地域においてイスラーム伝播の経緯や現状、スンニ派新旧グループの状況についてモスク等を訪問しインタビュー調査を行った。また、3回の現地調査ではタイのイスラームに関する現地語資料を収集した。 2022年度は、これまで実施した調査の内容を公益財団法人日本タイ協会機関誌『タイ国情報』雑誌論文で5回にわたって公表した。また、東南アジア学会年次研究大会において、スンニ派新旧グループに関して中間報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は3回の現地調査を予定している。8月に所属機関の業務を挟んで2回及び1月~2月に1回の計3回現地調査を行う。併せて、2022年度に行ったマレー語資料翻訳のフォローアップを行う。また、インターネットを通した補完的調査を引き続き実施する。 3回の現地調査では、タイ中部・東北部・南部及び南部地域マレー・イスラーム世界における新旧グループ(カナ・カオとカナ・マイ)の宗教実践の事例を調査し、その背景にある思想を考察する。併せて、研究協力者に依頼し、調査地におけるマレー語資料の翻訳を行う。そして、「カナ・カオ(古いグループ)」と「カナ・マイ(新しいグループ)」の思想と実践及び新旧グループをめぐる包摂・摩擦・排除の様態を明らかにすることを目指す。なお、現地調査ではイスラーム関連現地語資料を収集する。 研究期間を通して明らかになった研究内容については、公益財団法人日本タイ協会機関誌『タイ国情報』雑誌論文で公表する。また、2023年7月に開催される日本タイ学会年次研究大会で報告する他、その他所属学会研究大会での報告及び所属学会学会誌への論文投稿を行う予定である。
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