研究課題/領域番号 |
19K00096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
足立 広明 奈良大学, 文学部, 教授 (30412141)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ジェンダー / 女性使徒 / 神の前の個人 / 自己洗礼 / キリスト教 / テクラ / エウドキア / Homerocentones / 女性パトロン 恩恵施与者 / 個 / 女性 / エージェンシー / 公的地位 / 古代末期 / 変容 / asceticism / Modesty / 個の誕生と自立 / 文化変容 / 自己発見 / 慎み |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、キリスト教女性聖人テクラと新プラトン主義女性哲学者ヒュパティアの比較を中心に、古代末期の地中海世界における女性の自己発見の過程を宗教横断的に分析しようと試みるものである。神と向き合う個人という考え方は教父アウグスティヌスに行き着くが、それはキリスト教のみに、また男性のみに限定されてはいなかった。聖書外典の中でキリストに誓って自らに洗礼を授けたテクラの姿と、天上の一者に照応する内面の魂を探ろうとしたヒュパティアの姿はこのことを強く示唆している。近年の史料分析の進展をベースに、女性たちもまた変わりゆく時代のなかで神の前の自己の姿を模索していたことを明らかにする。
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研究成果の概要 |
研究は『聖書外典パウロとテクラの行伝』の分析に始まり、女性テクラが仲介者なしに神のみに誓って自己に施す洗礼場面に、古代末期における個人としての女性の誕生の可能性を見出だした。続いて、彼女やその母親もその一員と想定しうるローマ時代の地方都市の女性恩恵施与者らの実態を碑文で確認した。最終年度はこうした女性恩恵施与者の最大の継承者で、またテクラを理想化した娘ユースタを中心とする物語を執筆した皇妃エウドキアの執筆した物語分析に移った。テクラが女性使徒となる過程とローマの女性恩恵施与者についてはそれぞれ国際学会と国内学会で研究発表後論文を公にし、エウドキアについても研究発表後、現在論文執筆を進めている。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
近年ジェンダーに関連する研究は大きな進展を遂げているが、わが国の場合、そのほとんどは近現代を対象とするもので、ジェンダー研究の発信地である欧米において古代末期のキリスト教成立前後の文化的変容が重要な研究対象となっていることはあまり知られていない。女性使徒テクラもそのような研究対象で、彼女に関連する史料はこれまで男性使徒パウロの言葉のみから想定されてきた神の前の個人、自分の内に生きるキリストという概念を、女性もまた自らものとしていたことを示唆する。本研究はテクラの外典伝承を出発点に、彼女を生きる模範とした古代末期の女性たちの貴重な証言の復元を、皇后エウドキアの著作などから試みたものである。
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