研究課題/領域番号 |
19K00103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京学芸大学 (2020-2022) 富山大学 (2019) |
研究代表者 |
佐藤 真基子 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (30572078)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 古代末期 / アウグスティヌス / 女性 / 聖書解釈 / 教父 / キリスト教 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、西洋古代末期の思想において「女性」ないし「女性性」の概念が、いかなる思考過程を経て形成されたかを分析し、その概念が、後世の性差をめぐる理解に影響力をもつに至った経緯と、その実態を解明する。特に、キリスト教教父アウグスティヌスの思想において、その概念が人間の心性概念と結びつき、複層的なものとして理解されている点に注目する。そしてこの固有の理解が、他の教父らによる聖書解釈との影響関係の中でどのように形成され展開したかを精査することにより、現代にまで影響を及ぼすに至るその人間観の実態を解明する。それにより、性差をめぐる理解の思想史を捉え直し、性に関する現代的問題に示唆を与えることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度来取り組んできた、ラテン教父アウグスティヌスの思想における、複層的に階層的関係を含み持つ社会構造、およびその構造の中にはたらく人間の支配欲に対する彼の批判的考察が、その「女性性」の理解とどのように関係づけられているかについての研究を継続し、2022年5月にはシカゴで開かれた国際学会(NAPS Annual Meeting)において、"Dilemma of Domination and Subordination in Augustine"と題して研究発表を行うことができた。また、性差や社会的身分差によって分断される社会の実情を、聖書解釈を通して批判的に指摘するアウグスティヌスの議論について分析した論文 "Pia Impudentia:The Paradox of Ethics and Invisibility in Augustine"の最終校正を終えると共に(2023年内にLexington Booksから出版予定の書籍"Augustine and Ethic"に収録)、本論文を通して得られた知見を基に、「不可視性と共同体の倫理――アウグスティヌス「説教」九九における聖書解釈から」を執筆し、『あらわれを哲学する――存在から政治まで』(晃洋書房、2023年3月)に所収された。この論文では、階層的な社会構造に対する批判が、存在論を土台として展開されている実態を明らかにすることができた。また、現代社会においても問われている、偏見に伴う差別とそれについての無自覚が引き起こす倫理的問題について、アウグスティヌスの思想を基に一定の知見を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度内に本研究のまとめの作業を終えることを予定していたが、パンデミックの影響による出版の遅延、研究文献の入手の遅延、国際学会への参加の困難に伴い、十分にその作業を終えることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度内に行った研究発表を論文にする作業が終えられていないため、これを終えて学会誌に投稿する予定である。また、アウグスティヌスにおいて性差の概念が人間の心性にどのように関係づけられているかについて、ギリシア教父ディデュモスとの比較を行い2019年に投稿した論文"Man, Woman and Serpent as the Inner State of One person: Anthropology Based on the Interpretation of Genesis 3 in Didymus the Blind and Augustine of Hippo"は、パンデミックに伴う編集チームの都合で論文集の出版が延期されていたが、2023年内の出版に向けて2022年度末に校正作業が再開された。過年の研究成果も踏まえた加筆を加え、出版に向けて論文を完成させる予定である。さらに、6月と10月に開催される国際学会に参加し、専門家との意見交換を通して本研究を再点検し、まとめの作業を終える予定である。
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