研究課題/領域番号 |
19K00114
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
田中 靖彦 実践女子大学, 文学部, 准教授 (40449111)
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研究分担者 |
石井 仁 駒澤大学, 文学部, 教授 (90201912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 続後漢書 / 蕭常 / 六朝通鑑博議 / 正統論 / 李燾 / 中国史学思想 / 劉備 / 中国思想 / 中国史学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、南宋における正統論の展開について、蕭常の著した『続後漢書』を手がかりとして分析を加えるものである。中国における「正統」をめぐる議論、中でも三国時代について蜀漢を「正統」とする見解は、朱熹によって確立・普及したとするのが定説である。かかる定説を含め、南宋における正統論の展開について、朱熹とほぼ同時代人である蕭常が著した『続後漢書』を手がかりとして再検討する。従来ほとんど顧みられることのなかった同書の性格・特色を明らかにすると同時に、同書の史観を朱熹ら南宋の論者たちの史観と比較することにより、南宋における正統論のあり方を立体的に捉えることが、本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
令和四(二〇二二)年度も引き続き、南宋における正統論の展開についての研究を進めた。同年度は、これまで進めてきた蕭常『続後漢書』の研究をより立体的に位置づけるべく、南宋における孫呉をめぐる言説についての研究を進めた。 一般に、南宋では蜀漢正統論が有力であったと理解される。本研究がこれまで行ってきた蕭常『続後漢書』をめぐる研究からは、蕭常『続後漢書』がまさにそういった南宋代の蜀漢正統論的な性格を強く有していることを確認できるが、一方で南宋代には、蜀漢を中心に捉えるのとは異なる観点から展開される三国論も存在した。令和四年度は、かかる傾向を分析する史料として、李燾の著とされる『六朝通鑑博議』の研究に取り組み、学会発表1本、学術論文1本にまとめた。本年度明らかにした点は主に以下の通りである。 『六朝通鑑博議』は、孫呉を中心に三国時代を論じている。かかる観点は、南宋と孫呉の境遇が近いことからきているのであり、従来言われているような「南宋と蜀漢は置かれた状況が類似していたので、南宋では蜀漢正統論が台頭した」という理解には再考の余地があることがわかる。だが、後世に対しては蜀漢正統論が圧倒的な影響力を持った一方、『六朝通鑑博議』が説くような孫呉論はほとんど後世の耳目を引くことなく現在に至っている。『六朝通鑑博議』からは、当時において孫呉に着目して三国を論ずる傾向が存在したことを窺えると同時に、そういった史論が徐々に消えていく一因をも読み取ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和四(二〇二二)年度は、これまでに引き続きコロナ禍の影響を受けた。これまでよりは研究のための時間が確保できたため、比較的長文史料である『六朝通鑑博議』にも取り組むことができたが、これまでの研究の遅延の影響も出たため、全体としては研究の進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和三(二〇二一)年度までの研究では、『続後漢書』の分析を通し、同時代における蜀漢支持の潮流が強く看取できることを確認し、同時にそこから読み取れる当時の士大夫の価値観について分析を行ったが、令和四(二〇二二)年度は、蜀漢を中心に論じない三国論が同時代にあったことを示す史料にも研究範囲を広げ、南宋における三国論・正統論の立体的な把握を進める緒に就くことができたと考えている。今後はこれをさらに進め、同時代の論者の学術交流も踏まえて正統論の展開について研究を進める。
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