本研究は、20世紀の植民地体験が日本人哲学者の思索にどのような影響を与えているのか、そして植民地下で日本の臣民として育ち、日本の大学で学んだ台湾人や朝鮮人の哲学者が、京都学派をはじめとする当時の日本における哲学研究とどのように格闘し、自身の哲学を練り上げていったかを探る。台北帝国大学に勤務した務台理作、柳田謙十郎、京城帝国大学に赴任した安倍能成、台湾人哲学者として、日本に留学した林茂生、洪耀勲、曾天従、朝鮮人哲学者として朴鐘鴻などが主な分析対象である。個々の思想家の純哲学的な理論構成に配慮しつつ、思想史的観点から当時の東アジアを舞台とした具体的な知的交流の様相を明らかにする。
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