研究課題/領域番号 |
19K00129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
平倉 圭 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90554452)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 形象 / 触発 / ダンス / 身体 / 思考 / 芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、芸術の制作と経験において形象が身体をどのように触発するかを、具体的分析と理論研究により解明することだ。研究の焦点は2つ。(1)荒川修作+マドリン・ギンズの映画の分析を出発点に、1970年代以降の芸術表現を事例として、具体的形象が作者と観者の身体をどのように触発し変容させるかを分析する。(2)さらに対象を広げ、身体を触発する形象の力を、人類学・心の哲学・物質論・身振り論等を横断して理論的に研究する。これらを通し、芸術表現の核をなす形の「力」を解明したい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、芸術の制作/経験において「形象」が身体をどのように触発するかを、具体的分析と理論研究により解明することである。そこから本研究は、芸術的形象の制作/経験を、非人間的事物と人間身体が互いを巻き込みあう異種混淆的な「ダンス」として解明することを試みる。 2022年度は、この異種混淆的「ダンス」としての形象の制作/経験の探求を、宮沢賢治「蠕蟲舞手」論として論文に結実した(平倉圭「異種のタイポグラフィー 宮沢賢治「蠕蟲舞手」」 『蜘蛛の巣上の無明 インターネット時代の身心知の刷新にむけて』花鳥社、2023年2月、286-98頁)。賢治が印刷職人とともにデザインしたと考えられる特殊活字の造形を初版紙面の詳細な観察を通して物質論的に分析し、そこに人間と非人間の異種混淆的ダンスを見出した本論文は、「蠕蟲舞手」の解釈にまったく新たな観点をもたらすものである。本論文は人間と非人間との関係を両者が混淆する「形象」を通して分析するという、本研究がダナ・ハラウェイから得た観点を具体化したものであり、そこからさらに多くの形象の分析への展開を示すものである。 本年度はさらに、この賢治論で得られた議論をより広範な動物論、ないし地質=環境論へと広げていくための事例調査と文献調査を行った。同時に、荒川修作+マドリン・ギンズ論のための調査を深化させた。その中で見えてきたのは、これまで主に日本とアメリカの事例を対象に行ってきた本研究を、「太平洋」諸島のパースペクティブへと広げる可能性である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究の核となる異種混淆的な「ダンス」としての形象制作/経験とは何であるかを、宮沢賢治「蠕蟲舞手」論を刊行することで明確化することができた。本研究課題の一つの達成であり、現在はさらに一般化された理論の構築に着手することができている。以上により、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はヴィクトリア大学ウェリントン(ニュージーランド)で長期研修を行うため、事業期間を延長する。2023年度は、異種混淆的ダンスとしての芸術の観点を、太平洋諸島のパースペクティブへと広げることを計画している。2024年度以降は長期研修期間のリサーチを踏まえ、触発する形象としての芸術を、太平洋諸島にまたがる環境=地質学的美学の観点から掘り下げ、人類学・哲学・芸術学・動物論・身振り論といった複数の分野を横断しつつ、理論的探求をまとめあげることを目指す。並行して、荒川修作+マドリン・ギンズの作品をはじめとする現代の芸術実践を、この環境的=地質学的美学の観点から再解釈する。
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