研究課題/領域番号 |
19K00149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山口 惠里子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20292493)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | リチャード・ロング / 歩行作品 / 彫刻 / テクストワーク / マテリアリティ / 消散 / 不完全性の美学 / 歩く身体 / 場所 / 日常の美学 / 歩行 / マッドワーク / 歩行の文化性 / ティム・インゴルド / クリストファー・ティリー / 歩行論 / 美学 / ダートムア / 場所としての彫刻 / 日本 / 「あいだ」の場所 / 消散の美学 / 足跡 |
研究開始時の研究の概要 |
イギリスの現代美術家リチャード・ロングは、世界各地の地表を歩いて歩行作品を制作している。ロングは歩行中に発見した場所の石や流木を用いた彫刻を制作し、消えてしまう自らの足跡を可視化するが、それらの彫刻もやがて消えてしまい、ロングが撮影した写真としてのみ残る。このような「消散の原則」に基づくロングの「足跡の芸術」は、完全性・永続性を求める芸術や現代社会の完全性の暴力に抵抗するものである。本研究は、ロングの「不完全」な歩行作品を追究することにより、人間存在の痕跡としての「場所」の意味を再考する。ロングは日本でも数多くの作品を制作している。本研究は、日本の風景がいかにロングに与えた影響も追跡する。
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研究実績の概要 |
最終年度の2023年度には、編著書『日常のかたちー美学・建築・文学・食』を4月に筑波大学出版会より出版した。この中に発表した論文「足の跡、手の跡、息の跡ーリチャード・ロングの彫刻における消散」では、リチャード・ロングの「歩行作品」にみる芸術としての歩行と、日常的行為としての歩行との重なりを追究し、ロングの彫刻が消散する意味を、日常を織りなす不完全性の美学との関連から考察した。同論文ではまた、ロングの歩行作品のほか、ロングが自らの手の跡をつけるマッドワークについても考察した。 2023年8月にイギリスで実施したリチャード・ロング作品に関する調査も踏まえ、ロングに関する2本の英語論文をアメリカの学術雑誌(査読付き)に投稿し、いずれも受理された。これらの論文は2024年度に刊行される予定である。2本の論文のうち1本は、ロングが制作する彫刻・テクストワークを、場所と場所の「あいだ」で制作される作品として捉え、「あいだ」の意味について考察している。他の1本は、ロングが彫刻に多用する「石」がロングの歩行や作品に及ぼす作用について考察している。ロングにとって石は、コモンなものでありつつ、世界の流動を示し、素粒子物理学の理論も反映するものでもある。 研究期間は新型コロナウィルスの蔓延時期に重なったが、「足跡の芸術ーロングの歩行作品における「消散」と「不完全性」の美学」に関してイギリスや日本国内での調査を実施し、成果を編著および英語論文として発表することができた。ロングが歩行中に出会った場所で、その場所にある石や木を用いて制作する彫刻は、やがては形を失い、消散する。本研究では、このような永続性を目指さないロングの歩行作品と「不完全性」の美学を接続し、瞬時に場所と場所を繋ぐネットワーク社会において身体として自然の中に生きる人間存在の意味と、現代社会が喪失した「あいだ」の意味を再考した。
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