従来、仏画の制作目的やその信仰背景については、その依拠する図像や経典を特定することにより明らかにされてきた。本研究の目的は、作画技法を詳細に調査、検討することによって技法が本来的に有する属性、すなわち絵仏師によるもの、絵師によるもの、さらには素人画家によるものを見極め、主題と技法の「ずれ」に注目する。そして、そこに込められた意図、例えば、仏画に世俗画の技法を用いることにより仏画に現前性を付与すること、逆に名所としての春日野を描く世俗画の伝統に仏画の技法を用いることにより春日曼荼羅が成立するように、世俗画に聖性を付与すること等を検討し、その背景に広がる信仰の様相を明らかにすることを目的とする。
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