研究課題/領域番号 |
19K00184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
宮治 昭 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70022374)
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研究分担者 |
岩井 俊平 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10392549)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | バーミヤーン / 仏教石窟壁画 / 大仏 / 中央アジア壁画美術 / アフガニスタン仏教美術史 / 中央アジア文化交流史 / バーミヤーン壁画 / バーミヤーン遺跡 |
研究開始時の研究の概要 |
アフガニスタンのバーミヤーン遺跡群は、1979年以降の内戦の間に多大な被害を受けた。研究代表者は、破壊以前に現地調査を行って石窟の仏教壁画を研究し、現地でのスケッチに基づいて壁画の線図を作成した。これは現在も多くの研究者に利用されている。一方で、破壊後の調査を通して石窟の形態や壁画の年代に関する新たな基礎資料が得られ、さらに詳細な検討が可能となっている。本研究では、未整理・未公表のために活用されてこなかった遺跡破壊前の貴重かつ膨大な写真を活用してそれをトレースし、縮尺を入れた新たな描き起こし図を作成する。その過程で、他地域との文化交流と未だ不明な部分の多い制作年代を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、バーミヤーン石窟壁画について(1)最も重要な東西の二大仏の仏龕に描かれていた壁画を中心に、遺跡破壊前に撮影された写真データによって仏龕壁画展開図を作成し、それに基づいて仏龕壁画の描き起こし図を作成すること、(2)それと連動させて石窟構造と壁画の美術史的研究、(3)年代・編年を含めた歴史的位置づけを行うことを目的としている。 (1)については、京都大学人文科学研究所所蔵を中心とした国内のバーミヤーン写真資料を収集、整理し、1/10縮尺の東大仏壁画写真展開図を作成し、それを基に、研究代表者(宮治)の監修のもと、壁画模写の専門家である正垣雅子氏の制作により東大仏の天井壁画を完成させた。当図は今迄に作成された描き起こし図の中で最も精密なもので、今後のバーミヤーン研究の基礎資料として国際的に役立てることができる。また、この成果をもとに、東大仏壁画と同様に西大仏の仏龕壁画の写真展開図も専門の委託業者と宮治が連携しながら精緻なものにすることができた。これを基に研究代表者の監修のもと、正垣雅子氏の制作により西大仏の仏龕壁画を現在制作しており、半分ほどが仕上がった。 (2)については、本年度も引き続きガンダーラの仏教信仰や中央アジア美術との比較検討を進めた。2022年1月29日にオンライン「バーミヤーン・フォーラム-二大仏の破壊前と現在:課題と展望-」を開催し、宮治が「バーミヤーンの調査・研究を振り返って-二大仏の破壊とその後:現在と課題-」と題して研究発表を行った。また、描き起こし図制作を担当した正垣雅子氏により、「東大仏仏龕壁画の描き起こし図の作成-中央アジア壁画の模写を踏まえて-」と題して研究発表が行われ、描き起こし図の詳細と意義が報告された。研究分担者である岩井俊平氏は「新たな調査成果から見たバーミヤーン遺跡の年代」を発表し、本研究の成果の一部として意義あるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に作成したバーミヤーン東大仏の仏龕壁画の写真展開図をもとに2020年から描き起こし図に取り組み、宮治の監修のもと、正垣雅子氏の制作により、これまでにない精緻な描き起こし図の作成を目差し、作成の過程で生じた細部の確認作業などはコロナ禍の影響もあり、数度にわたり修正を加えたため、遅れが生じたが4月末に完成させることができた。 本研究では続いて、西大仏の仏龕壁画の描き起こし図の作成を目標としている。西大仏の壁画についても、破壊前の京都大学人文科学研究所所蔵資料を中心に調査して、1/10縮尺の写真展開図の作成を行った。東大仏壁画に比べ西大仏壁画は規模も大きく、本年度は宮治の現地での図面と照合しつつ、委託業者とオンラインで5回にわたり確認作業を詳細に行ったため時間を要したが、写真展開図を完成させることができた。この西大仏壁画の写真展開図をもとに、東大仏仏龕壁画制作と同様、宮治の監修のもと正垣雅子氏が描き起こし図の制作に着手し、4回にわたって二名で検討を加え、コロナ禍の影響もあり完成に遅れが生じているが、本年度の前半には完成の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)破壊前の近接写真の調査とデータ化については、引き続き、京大人文研所蔵データ以外に、名古屋大学調査隊撮影のものなど、国内の所蔵機関での調査によって資料を選別、整理しながらデータ化を行う。西大仏の仏龕壁画については、本年度1/10縮尺の写真展開図を完成させることができた。この写真展開図をもとに、本年度は東大仏仏龕壁画の作成の経験を生かし、宮治の監修のもと正垣雅子氏に依頼しており、精密な描き起こし図の制作を完成させる見込みである。 (2)周辺地域の壁画美術との比較研究についても引き続き、アジャンター石窟をはじめとするインド各地の遺跡、ガンダーラの遺跡、また、ペンジケントをはじめとする西トルキスタンの遺跡など中央アジアの壁画美術の作例との検討を行っていく。作成した部分的な描き起こし図を活用しながら、東西文化交流の中でのバーミヤーン美術の位置づけを考察する。 (3)これらの成果を生かしつつ、放射性炭素年代測定との比較検討を行い、総合的にバーミヤーン壁画の編年を考察する。
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