研究課題/領域番号 |
19K00191
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
甲斐 教行 茨城大学, 教育学部, 教授 (60323193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 彫刻 / ルネサンス / イタリア / 図像解釈 / カトリック / パトロネージ / バンディネッリ / クレメンス七世 / 人文主義 / メディチ家 / ローマ教皇 / フィレンツェ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、16世紀イタリアで活躍したフィレンツェ出身の彫刻家バッチョ・バンディネッリ(1493-1560年)の前期作品の図像を分析し、主要な委嘱主で彫刻家と深い交友関係で結ばれたジュリオ・デ・メディチ枢機卿(1478-1534年/クレメンス七世としての教皇在位1523-34年)の文化的・思想的メッセージを作中に読み解くことを目的とする。 研究対象は、1541年までに完成したバッチョの諸作、特に枢機卿時代を含むクレメンス七世が委嘱に関与または献呈を受けた作品10点前後を中心とする。まず初期作品《オルフェウス》(1519年頃、フィレンツェ、メディチ=リッカルディ宮)の解釈から研究を開始する。
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研究成果の概要 |
バンディネッリの前半生の庇護者クレメンス七世が枢機卿ジュリオ時代に庇護した人文学者クリストーフォロ・マルチェッリの対話篇『運命について』(1519年起草、Vat. Lat. 5800)を読解し、ジュリオの分身となる登場人物ユリダスが運命決定論とも偶然論とも袂を分かち、人間の意志による運命の変更を可能と考える思想を担うこと、思考の枠組みにおいてプロティノスの影響が顕著なことを明らかにした。またバンディネッリが晩年に起草した『素描の書』を、同時代のヴァザーリ『美術家列伝』やドーニ『素描』と比較して美術批評史の中に位置づけつつ、レオナルドの科学的アプローチの影響とミケランジェロへの敬意を指摘した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の学術的独自性は、彫刻家バンディネッリの前半生において一貫したパトロネージを継続した教皇クレメンス七世周辺の精神的文化圏に照らして、バンディネッリの前半生の一連の作品を、個別の状況を超えて包括的に扱うことで、諸作に通底する精神的文脈に基づく図像解釈を実施する点に存する。それは単にバッチョ及びクレメンス七世の再評価という欧米歴史学の最新動向を先駆ける国際的な成果となるだけではなく、欧米の学術的成果の使い回しを乗り越え、一次資料の直接参照による最先端の新解釈を提起するものである。もって日本の西洋史学に及ぼす広範な方法論的・社会的波及効果を期する。
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