研究課題/領域番号 |
19K00198
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
|
研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
吉村 典子 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (20347917)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | リチャード・ハミルトン / ニューカッスル / メディア / 写真 / 版画 / ベーシック・デザイン / バウハウス / ウルム造形大学 / ハットン・ギャラリー |
研究開始時の研究の概要 |
美術家リチャード・ハミルトンの芸術活動において、彼がニューカッスル大学で教職を得た1953年から、ロンドンと行き来しながら同地で過ごした約13年間は、特筆すべき次の点を有する。①同大学「ベーシック・コース」の確立、②大学付属ギャラリーでの展示実験と美術家との交流、③学内の制作機材・設備等の修復と活用による自身の表現メディアの開拓、である。これらは戦後美術の重要な動きと重なり合う。①と重なるのは「ベーシック・デザイン運動」、②はマルセル・デュシャン論、③は写真と版画によるミクストメディア、である。本研究は、ニューカッスルにおける活動に着目し、戦後美術との関係を射程に入れ、彼の表現の特質を探る。
|
研究成果の概要 |
ハミルトンがニューカッスル大学で教職を得た1953年から、ロンドンと行き来しながら同地で過ごした約13年間を「ニューカッスル時代」と位置付け精査した結果、この後の展開の基盤となる要素が形成されていることが見出された。この時代の作品にはポップ・アートの先駆的作品とされるものが含まれるが、彼の関心はその表象のポップとしての意味よりも、表象を示すメディアを通しての知覚世界の開発にあった。特に、この後にも引き継がれることとなる「変容」と「転換」の思想と表現は、彼の「スタイル」を伴わない作品展開に主要な役割を果たすことになるが、結果的にそれが、彼独自のスタイルを生み出すことになることを明らかにした。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では、これまで等閑視されていたハミルトンのニューカッスル時代の意義と新知見を明示することができた。この頃彼は「ポップ・アーティスト」として着目されるようになり、しかしそのために、彼の芸術の真髄を見えにくくしているところがあったが、本研究により、彼が「ポップ」の意味よりも、メディアの知覚開発に重きをおいているこを明らかにでき、「変容」と「転換」という、のちの時代の作品分析の手掛かりとなる要素を見出すことができた。この点は、ハミルトンが自身の造形スタイルを排除しようとする意思とも繋がり、かつ、結果的に彼固有のスタイルの生成に繋がるという彼特有のパラドクスの一側面をも示しうるものとなった。
|