研究課題/領域番号 |
19K00204
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 九州大学 (2021-2022) 神戸女学院大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
伊藤 拓真 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80610823)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ルネサンス美術 / ペルジーノ / 美術批評 / システィーナ礼拝堂 / ヴァザーリ『美術家列伝』 / フィレンツェ / ローマ / 芸術地理 / ラファエロ / イタリア美術 / 様式 |
研究開始時の研究の概要 |
1500年前後のイタリアにおいてはウンブリア地方出身の画家ペルジーノが広範な影響力をもち、ペルジーノ主義とも呼べる複合的な現象が生じた。本研究の目的は、ペルジーノ様式がいかにして広域的な芸術様式となり、次世代に受け継がれていったのかを明らかにすることである。作品に繰り返し用いられる聖母子像や聖人像の「型」の分析を行うとともに、通時的視点からは美術批評における言及や後世の画家による様式模倣を考察の対象とする。ペルジーノ主義の汎イタリア的広まりは、次世代のラファエロ受容などを予示する現象であり、本研究の成果によって盛期ルネサンス期へとつながる芸術地理的枠組みの変容が解明されることが期待される。
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研究実績の概要 |
本年度の研究においては、関連する作品および美術批評的文献の分析を進めた。3月後半には現地における関連作品・展覧会などの実見調査を行った。美術批評についての分析も順調に進んでいる。この結果、二つの方向での知見を得ることとなった。 ひとつめは、ペルジーノの名声の広域での確立の過程で、ペルジーノの反復的制作手法が大きな役割を果たしたということである。ペルジーノの作品では、類似した構図や人物像が頻繁に用いられている。従来の研究においては、ペルジーノの反復的な制作手法は画家の名声の失墜と結び付けられていた。しかし、文献・作品の分析の結果、このような反復的制作手法は画家の存命中はむしろ好意的な評価を生み出す一因ともなっていたことを確認した。 ふたつめは、16世紀前半にペルジーノの評価が失墜する過程を詳細に確認した。1550年に出版されたヴァザーリの『美術家列伝』ではペルジーノは時代の芸術家たちによって乗り越えられた存在とされたており、画家のイメージを決定的なものとした。そのような評価の低下は、システィーナ礼拝堂のペルジーノの壁画装飾が破壊される一因ともなった。このようなペルジーノの評価の変化に、フィレンツェ=ローマ的な価値観による美術批評の一元化の動きが作用していたことを確認した。 これらの研究活動の成果として、第106回九州藝術学会において「ペルジーノの名声と反復」の発表(2022年7月)、2022年度美術史学会西支部大会において「システィーナ礼拝堂の失われた壁画」(2023年4月)を行った。また『地中海学研究』に「ペルジーノの名声と反復的制作手法」を投稿・受理されており、2023年6月に発行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行にともなう海外渡航規制のため、前年度までは作品の実見調査に支障をきたしていたが、本年度の後半からは状況の改善を踏まえて、3月に現地での調査を開始することができた。現地では、ヴァチカン宮殿に残された15世紀半ばから16世紀初頭の装飾の調査を行ったほか、ペルージャで開催されているIl meglio maestro d'Italia. Perugino nel suo tempo展、フェラーラで開催されているRinascimento a Ferrara. Ercole de' Roberti e Lorenzo Costa展などを実見した。 また美術批評の分析としては、代表的な文献資料であるヴァザーリの『美術家列伝』のほかに、ラッファエーレ・マッフェイの『都市事物註解』やフランチェスコ・アルベルティーニ『新旧ローマの驚異についての小著』などにおけるペルジーノの存命中あるいは没後間もない時期に執筆された文献の内容を確認した。 新型コロナウイルス感染症にかかわる状況への対応のため、研究開始当初の計画とは順序が相前後した部分もあるが、研究全体として順調に推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は海外での現地調査を本格的に再開することができたが、当初の計画と比較すると調査がいまだに不足している。そのため、研究期間を1年延長した。2023年度には、海外現地での集中的な調査も計画しており、秋期には在フィレンツェ・オランダ大学美術史研究所に滞在しての調査の実施を計画している。特に、本研究課題の重点項目のひとつとしてあげたペルジーノの工房組織の解明については、現地での広範な作品調査が必要である。ペルジーノの工房ではフィレンツェだけでなく、多様な出自をもつ助手が働いていたと考えられており、その理解のためには各地の芸術的状況を把握することが必要となる。本年度はこの目的での調査の調整・実施・および調査前後の情報整理に注力する。また、本年度末に実見したIl meglio maestro d'Italia. Perugino nel suo tempo展の内容については、図録の出版を待ち、内容の精査を行う。
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