研究課題/領域番号 |
19K00224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 金沢美術工芸大学 |
研究代表者 |
芝山 昌也 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (90435222)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 造り物 / つくりもん / 祭礼の造形 / 立体造形 / 彫刻 / 祭礼の立体造形 / 近代日本彫刻 / 見世物の造形 / 江戸の立体造形物 / つくりもの / 籠細工 / 地域芸術祭 / アートプロジェクト / 芸術祭 |
研究開始時の研究の概要 |
江戸・明治の見世物小屋や各地の祭事で見られた立体造形物の内部構造(骨組み)には、竹細工や籠細工のように、内部が空洞になっている「中空構造」が多く使われていた。この「中空構造」の基礎研究を現在継承されている祭礼の造形物を中心に行う。そして、近代日本彫刻が受容してきた「心棒彫刻」と対比させることによって、明治以前の「中空構造を持つ立体造形物」が豊かな立体造形を達成していたことを明らかにする。また、造形物が恒久に維持されることを前提としていないがゆえに有機的に変化してきた「中空構造」を実際の彫刻作品に活用し、日本古来の造形に起因する現代的な彫刻作品を制作し展覧会等で作品を発表する。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、祭礼に登場する「造り物」の制作現場の実地調査を中心に研究を進めた。本研究の開始年度から始まったコロナ禍の影響で、研究対象としていた祭礼はその殆どが中止となる状態が続き、現地調査が実施できない状況が続いていた。しかし、令和4年度は規模を縮小しながらも祭礼を開催する自治体もあり、様々な条件付きではあったものの、3年振りに祭礼が行われている地域へ入り、「造り物」の準備、制作、完成までの各段階を取材することが可能となった。 調査は「造り物」の制作が現在でも盛んな熊本県内の祭礼を主な対象にして進めた。なかでも、熊本県山都町で行われる八朔祭の「大造り物」の制作段階の研究は充実したものになった。地域に残された文献の調査では、この祭礼が独自に発展した経緯についての見解を出すことができた。また、制作団体への実地調査では、制作の工夫や下地に使われている素材など、祭礼当日の視察では得られなかった知見を得る事ができた。「大造り物」は表面の素材に近隣地域で自生している植物を使用する事や、周辺地域とは比較にならないほど巨大なサイズで作られることが最大の特徴になっている。熊本県は街道沿いに多くの造り物が存在するが、そのなかでなぜ山都町の「大造り物」が独自に発展していったのかは、現地の制作者へのインタビューによって、文献を裏付けることができるなど、概要を分析する事ができた。使われる素材の調達方法や変遷など、当事者への取材でしか得られなかった情報を得るなどの成果があった。 今年度の詳しい研究成果は、「近代日本彫刻考(二)―山都町の「大造り物」を中心にー The Consideration on Modern Japanese Sculpture (2) : On “Otsukurimono” in Yamato-cho」(令和4年度 金沢美術工芸大学紀要67号)に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度でに本研究を終えることができると計画していたが、本研究が始まった年度から令和4年度まで、ほとんど地域に入っての実地調査が行えなかったことが研究の遅れに大きく影響している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は本研究の総括として、熊本県を中心にして、大分県や宮崎県など旧街道沿い(日向往還や豊後街道)に広く点在している祭礼の「造り物」の実地調査を行う。実地調査でしか得られない「制作の手法」が如何に伝播したのか、その概要を明らかにすることによって、西日本に残る「造り物」の制作の系譜の概要を明らかにしていきたい。令和5年度の祭礼は多くの自治体でコロナ禍以前のように祭礼が実施されると考えているが、コロナ禍を経て「造り物」を省略し、「造り物」が途絶える予想されるので、その変遷を注視しておきたい。
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