研究課題/領域番号 |
19K00227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
柴山 拓郎 東京電機大学, 理工学部, 教授 (80366385)
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研究分担者 |
大村 英史 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 講師 (90645277)
浜野 峻行 国立音楽大学, 音楽学部, 非常勤講師 (70727693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 電子音響音楽 / コンピュータ音楽 / プロジェクトアート / サウンドアート / 芸術実践 / Electroacoustic Music / Computer Music / 音楽生成 / 芸術フィールドの共創 |
研究開始時の研究の概要 |
電子音響音楽は1950年にわが国に伝わって以降,今日も多くの人々になお難解とされており,多くの聴き手・作り手を得るには至ってはいない.本研究課題では,電子音響音楽の「参加型・共創型」の表現フィールドをデザインするために,1)ワークショップの効果測定とその事後の参加者との協働によるプロジェクトアートの参与観察,2)電子音響音楽の認知基盤の定量化,3)国内外での並行実施による本研究課題の一般化を通した表現実践と調査・研究を行う. これにより,先駆的芸術音楽の創出と受容の枠組みを緩やかに解体し,電子音響音楽の共創的フィールドを形成し,その過程自体をあらたな先駆的芸術表現としてリデザインする.
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研究実績の概要 |
2020年度の「電子音響ピープルプロジェクト」の実践概念の提案, 2021年度のこのプロジェクトの核となるワークショップにおける創作指導方法の提案を踏まえ, 2022年度にはそれらについて1) 電子音響音楽の構造を理解するための検証と, 2)電子音響音楽の創作ワークショップの効果を, 過去の認知実験で取得していたデータの解析および新たな認知実験による検証を行った. 1)については, a) 電子音響音楽の素材の経時的な出現順序における偶然性が許容されることを明らかにするとともに, b)電子音響音楽の創作指導の際に,作品に動きを与えるためにモンタージュする音響素材に対して形容詞対を用いた比喩的なイメージ捕捉とそのコントラストを高く維持するという指導方法が妥当であることを明らかにした. また, b)においては,電子音響音楽の創作経験を通して, 通常の音楽と比較したときに複雑性が高く, 難解と受け止められがちな楽曲に対する印象が向上することを明らかにした. これらの実践概念の意義を支える基盤としての実証データの取得とともに, プロジェクトのもう一つの柱である, 電子音響音楽作品の事後協働制作を, 集団創作的な作品として実現する取り組みを実施し, 2022年1月に完成させた楽曲の他,2022年12月にかけて他3曲の楽曲の完成に至った. このうち前者の作品は International Computer Music Conference (ICMC) 2022 の作品公募に入選し, 上演された他, 後者は, Intercollege Sonic Arts Festival 2022で上演された他, Saitama Muse Forum および埼玉県立近代美術館共催による「TAKARABUNE2023」に, サウンドインスタレーション作品として出品・展示を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19以降国内外での社会実践をオンラインや模擬ワークショップに置き換えることで, この社会実践の概念を定量的なデータと共に実証する方法と, 電子音響音楽の構造の理解を, 認知実験を通じて取得したデータと共に明示する方法の双方について, 当初予定していた成果を概ね達成できていると考えている. その理由として, 昨年度当初まで研究全体が遅れている状況であったが, その間に取得したデータの分析や, 12月に実施した模擬ワークショップを通じ, その結果が, 本研究課題が当初想定していた意義を支持することを明示するものであっただけでなく, 本研究課題をさらに掘り下げるための視点をももたらすものであったことが挙げられる. また, これら学術的な成果に加え、楽曲創作についても参加者個々人への指導方法ならびに事後の協働制作における集団創作的な楽曲構成の手法や, その概念構築の過程でのコミュニケーションの手法等に, 概ね本研究課題が想定していた妥当性が見いだされたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究・創作および模擬ワークショップからは,新たなテーマを見いだすことができた.そのうち,電子音響音楽の創作指導における形容詞対による言語ラベルを用いた指導方法について,参加者が完成させた楽曲のうち,指導方法が上手く伝わっていないことが聴覚的に判断できる楽曲を選定し,その言語ラベルによるコントラストが,高評価を得た楽曲と比較して低いかを検証するための分析を行う.この分析は2023年4月に投稿した国際会議論文の主張をより確実なものとするための取り組みといえる.また,それらの5軸の形容詞対を,電子音響音楽の生成モデルのデザインを見越した,2軸へのマッピングを効率化するための方策の導出に取り組むこととする.
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