研究課題/領域番号 |
19K00250
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 同志社女子大学 (2020-2023) 大阪大学 (2019) |
研究代表者 |
筒井 はる香 同志社女子大学, 学芸学部, 准教授 (20755342)
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研究分担者 |
山名 仁 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00314550)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | フォルテピアノ / イギリス式ピアノ / ダンパー / アーティキュレーション / ペダリング / 止音装置 / ブロードウッド / 鍵盤楽器史 / スクエア・ピアノ / 止音効果 / 残響 / ピアノ音楽演奏法 / 18世紀、19世紀 / 歴史的鍵盤楽器 / ピアノ演奏 |
研究開始時の研究の概要 |
ピアノ音楽演奏研究においてペダリングを含むアーティキュレーション、すなわち音のつなげ方や切り方は重要な課題であるが、その問題に直接関わる止音効果が、時代ごとにどのように変遷してきたかについては正確なことが分かっておらず、作曲家が意図した演奏指示を理解するための基盤がまだ整っていない状況である。本研究は、鍵盤音楽のためのレパートリーの大半が作曲された18世紀、19世紀のフォルテピアノのダンパーの変遷を文献調査、楽器調査、および修復家への聞き取りを通して明らかにすることを目的としている。時代ごとに止音効果が異なっていたことが明らかになれば、ピアノ音楽演奏に劇的な変化がもたらされると考えている。
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研究実績の概要 |
本研究は,検眼楽器歴史研究の一環として,18世紀,19世紀におけるイギリス式ピアノの止音装置のダンパーの変遷と,ペダリングを含むピアノ演奏法との関わりを解明することを目指すものであった. 今年度は、イギリスのRoyal Academy of Music, The Benton Fletcher Collection(筒井・山名),オランダのEdwin Beunk Colleciton(山名)等において,製作年代,形状の異なるフォルテピアノを,ダンパーの変遷と止音効果との関わりに注目して調査した.その結果,1820年代から1840年代にかけてダンパーの素材がクロスからフェルトに変化したことが確認された.なお演奏許可が得られた楽器については,ジョン・フィールドおよびショパンのピアノ作品の一部分を演奏した. ダンパーの素材が変化し,音がよく止まるようになったことは,演奏に影響をもたらしたと考えられる.クロスのダンパーをもつピアノとフェルトのダンパーをもつピアノとで,低音に音の跳躍があるアルペジオの音型を楽譜の指示通りにペダルなしで演奏したところ,前者ではタッチとタイミングをコントロールすることによって,音楽の流れを細分化させることなく,低音の動きによる和声の変化と対位法的構造を明確に表現することができた.しかし後者においてはペダルのオン・オフがはっきりとしており,特にオフの指示の箇所については全音域において音と音の隙間が目立ち,ペダル使用箇所の拡大を図らない限り,音楽の流れが細分化されてしまうということが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類感染症から5類感染症に移行し,渡航が現実的となったことから,研究計画書に示した欧州の博物館や個人コレクションで調査を行うことが可能となり,予定していた調査を遂行することができたからである.また現地では博物館の学芸員や楽器管理者とコンタクトを取ることができ,修復記録やダンパーの素材について追加でインタビューをすることができた.さらに,一部ではあるが演奏が許されたことから,ダンパーの変遷と演奏法との関わりについて具体的に考察する手掛かりが得られたためである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,止音装置と演奏法との関わりを演奏実践の観点から明らかにすることを目的とする.同一曲による比較演奏の分析結果は,論文または公開講座として公開される予定である.さらにダンパーの素材が変化した時期について現段階では1820年代から1840年代と開きあるが,この間に作られたより多くの楽器を調査することでより正確な時期を特定することが可能になるのではないかと考えている.そのため現存する楽器の調査も引き続き行う予定である.
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