研究課題/領域番号 |
19K00290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬場 美佳 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90405548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 明治文学 / 新聞小説 / 『郵便報知新聞』 / 森田思軒 / 原抱一庵 / 新聞『国会』 / 幸田露伴 / 泉鏡花 / 新聞「国会」 / 郵便報知新聞 / 翻訳小説 / 高田早苗 / 読売新聞 / 黒岩涙香 / 新聞編集 / 尾崎紅葉 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は19世紀後半に新しく登場したメディアである新聞を前に、明治日本の文学者たちがどのような試みをなそうとしていたのかを明らかにするものである。とくに明治中期の文学者にして翻訳家、加えてジャーナリストであった森田思軒と黒岩涙香に着目し、欧米の新聞と物語流通の影響を強く受けながら、新聞と文学の有機的な関係を構築しようとしていた編集者であったことを評価していく。さらに同時期に新聞に主体的に関わった坪内逍遥、尾崎紅葉と硯友社系の作者たちもまた、新聞と文学を積極的に結びつけることを模索していたと予想され、これらの研究によって新聞とともに発展してきた日本文学の特性を明らかにすることを目指すものである。
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研究成果の概要 |
本研究は、日本近代文学において特徴的な新聞と小説との関係について、とくに明治中期の小説に注目して調査・考察を行ったものである。『郵便報知新聞』における森田思軒の翻訳小説の掲載は、国際的な知識を読者に提供するために積極的に導入されていた。それは、紙面が提供する日本社会の現実を読者が批評的に理解することを可能にしたが、そのために内容や表現が高度に編集されていた。この新聞紙面と小説との密接な連動関係は、後に新聞社員として小説家となる書き手たちの創作にも影響を与えたと考えられる。研究推敲の過程で、新聞の文脈を即時的に復元したことによって、新聞小説の新たな評価の視座を得たことも成果であった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の学術的意義は、19世紀後半における国際的な物語流通を背景に、新聞記事の批評として翻訳小説が密接に関係するに至ったことを、森田思軒と『郵便報知新聞』の実態から明らかにしたことである。この意味で思軒の「炭鉱秘事」はもっとも成功した翻訳かつ編集であり、この試みが新聞読者に与えたインパクトは大きかった。思軒の成功は、後の小説家たちにも影響を及ぼしているといえ、たとえば幸田露伴の「五重塔」もまた新聞紙面と連動していた。新聞小説の議論は通俗性に回収されやすい。だが、明治中期という改良の時代においては、社会的言説との関係において多様な試みが目論まれた最先端の実験場でもあったことを改めて提示したい。
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