研究課題/領域番号 |
19K00324
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
高橋 秀晴 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (40310982)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 今野賢三 / 小牧近江 / 金子洋文 / 種蒔く人 / プロレタリア文学 |
研究開始時の研究の概要 |
雑誌『種蒔く人』の主要同人である今野賢三(1893年-1969年)に関する新資料と未利用の旧蔵資料(書簡、切り抜き、草稿、雑記、メモ、写真、書類、ポスター、パンフレット、チラシ等)の整理・分析を通じて、賢三がなぜ文学に志したか、有島武郎への接近と別離の実際はどうであったのか、小牧近江、金子洋文との再会と『種蒔く人』創刊とはいかに連絡していたのか、作家としての創作意識はどのようであったのか等の問題を解明し、『種蒔く人』の再評価とその周辺の文学史を補完する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、主として今野賢三の労農運動観に関する調査・考察を進めた。『秋田県労農運動史』(同刊行会、1954年)の記載を軸に、秋田市立土崎図書館今野賢三寄贈資料及び秋田県立図書館所蔵「種蒔く人文庫」の中の、「雑録」「創作メモ」等の雑記、『レフト』『進め』等の雑誌・新聞・切り抜き、阿仁前田争議、農民組合労働争議に関する資料等の争議関係書類を用いて、賢三の歴史認識とその影響関係について検証した。 たとえば、「突如、農民労働党に内相禁止令を下す」(『萬朝報』1925年12月2日)、「無産者政党の結社禁止」(『東京朝日新聞』1925年12月2日)等の新聞の切り抜きが残されているが、この問題意識と秋田県の一日市の小作人組合成立(1925年11月17日)との関連について考察した。賢三の関心は「約一年精根枯らし一日市争議漸く解決」(『秋田魁新報』1928年9月12日)を切り抜くまで継続して行く。 また、『秋田県労農運動史』において、一日市の組合組織運動成功の立役者として畠山松治郎を挙げているが、賢三宛て松治郎書簡(1921年3月1日、同4月22日、同5月16日、同6月6日、同6月24日他)等に、両者間の信頼関係が窺える。 他方、一日市の小作争議は、金子洋文「赤い湖」の題材になっている。小説では、裁判が進むほどに小作側が不利になっていったことが組合の決起を促す、という構図になっていた。しかし、『秋田県労農運動史』は、後藤判事による不眠不休の調停によって和解に至ったと伝える。資料群が示す賢三の綿密な取材と調査が、盟友洋文の代表作の創作部分を明らかにする結果をもたらしたことになる。以上のことを『八郎潟文学誌』(秋田文化出版、2024年3月)の中で論じた。 他に、中村能盛秋田県立大学客員研究員に秋田市立土崎図書館所蔵の賢三関係書簡の電子化を依頼し、データを同館に提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で全体的に遅れがちであったが、研究期間の延長が認められたので挽回しつつある。他方、『レフト』『文学評論』等の雑誌に関連する作品が相当数存在することが判明し、それらの整理・分析という作業が加わったのは予定外であった。しかし、今野賢三に関する総合研究という意味からすれば、むしろ望ましい事態であると考えられよう。以上の状況から、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画になかった小説や評論等が相当数見つかったので、それらの整理・分析をした上で本研究に位置づける必要がある。また、2023年度に引き続き、秋田市立土崎図書館今野賢三寄贈資料のうち、重要と思われる書簡と原稿について電子化を進め、所蔵館に提供することを考えている。 2024年度は最終年度となるため、本研究全体の総まとめをし、学会発表等を経て論文等として公表する予定である。
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