研究課題/領域番号 |
19K00339
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
泊 功 函館工業高等専門学校, 一般系, 教授 (10390379)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 江戸漢詩 / 北方辺塞詩 / 郷土と漢詩 / 北方警備(蝦夷勤番) / リンガフランカ / 江戸時代北方警備 / 朝鮮漂流官人李志恒 / 松前僧釈智潤 / 蝦夷地 / 唐牛大六『松前紀行』 / 朝鮮漂流者李志恒 / 秋月韋軒 / 南摩綱紀 / 蝦夷漢詩 / 武田斐三郎 / 栗本鋤雲 / 蠣崎松濤 / 唐太日記 / 松前紀行 / 日本漢詩 / 辺塞詩 / 東北・北海道 |
研究開始時の研究の概要 |
北方最辺境藩である松前藩の中級武士であった蠣崎松濤(伴茂)の個人詩集『松濤詩草』には「イシカリにての作」「ユウフツ勤番」と詩題下註を持つ詩が含まれる。これは警護に赴いた蝦夷地陣屋での作である。これ以外にも蝦夷地経営に関わった武士たちは蝦夷の景色・風俗を詩に残している。例えば、松前藩用人山田三川の『三川詩集』、幕命にて樺太・千島を探検した栗本鋤雲『唐太小詩』他、まだ東北各地に埋もれたままの詩もある。 本研究では日本文学史では等閑視されてきたそれらの詩を日本辺塞詩と名付け解読し、研究のプラットフォームを提供するとともに、これらの詩に現れた近代以前の「異文化観」「辺境観」を明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究最終年度(令和5年度)は、資料調査の補遺として別海町郷土資料館に残された会津藩士南摩綱紀の書軸を確認するために現地に赴き、当該書軸を含めた関係資料の調査を実施した。綱紀の詩集『環碧楼遺稿』には北方辺塞詩に該当する詩も含まれているが、その書軸には、彼の詩集に再録されていない詩が書かれていたからである。会津藩は幕末期、幕命によって、現在の中標津町・別海町の警備を担務していた。会津警備隊の隊長兼当該地区の代官であった綱紀は、当地でアイヌ語の通辞を務める加賀伝蔵を雇用し、経書をアイヌ語に翻訳し、アイヌの王化に努めたという。その伝蔵が故郷の秋田にいる兄の様子を心配して帰省する際、綱紀は彼の才を称え、これまでの仕事ぶりに謝意を示す「大象伝蔵の其の兄を省みて秋田に帰るを送る」(「大象」は通辞の意)という自詠詩を揮毫した。ただ現地で確かめたところ、稿者の定義するところの北方辺塞詩としての内容を備えていなかったため、本研究成果の中で公表はしないが、別に歴史的意義のある詩内容を持つものなので、本件に関する研究成果については別途公表する予定である。 令和5年度は最終年度であるため、これまでの研究成果をまとめた研究報告を冊子の形で作成し、印刷業者に依頼して100部印刷した。それは研究に御協力いただいた方々、また資料提供に便を図っていただいた各地の図書館などに発送する予定である。 研究全体を通して、先の報告で明らかにした研究成果は以下の通りである。1北方辺塞詩の定義・要件が確定できた(日本漢詩の新カテゴリーの創出)2現行で確認し得る限りの詩を収集し、解読できた(研究プラットフォームの形成)3ただし、当初多数の北方辺塞詩が収集できると思われていた蝦夷勤番藩士の残した文書には、ほとんど北方辺塞詩がのこされていないことがわかった(今後の課題)4北方辺塞詩における詩精神の一部解明(今後の課題)
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