研究課題/領域番号 |
19K00347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
野口 哲也 都留文科大学, 文学部, 教授 (90533000)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 幕末 / 明治 / 写実 / リアリズム / 泉鏡花 / 人形 / 彫刻 / 生人形 / 写真 / 博覧会 / 松本喜三郎 / 安本亀八 / 高村光雲 / 国文学 / 比較文学 / 写実主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、幕末から明治期にかけて日本の文学や造形芸術が外国文化との接触によって刷新を図っていく際に、リアリズムの理念や技法の導入が重要な役割を担っていたこと、またその最も核心的な対象として人間そのものが見据えられていたことに着目する。単純に言えばそれぞれの近代化に「物語から小説へ」「人形から彫刻へ」という具合のパラダイム転換が認められるわけだが、それらの方法論や人間像がたどった形成過程を比較検証し、ジャンルを超えた影響関係を明らかにすることによって、19世紀後半の日本文化史に新たな知見を提示したい。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、海外の所蔵機関への出張による資料調査を基盤として幕末から明治期における生人形の制作や興業の実態を明らかにする作業を留保し、文献資料による当該時期の写実思想の展開と文学作品の関連について考察することに注力した。 前年度から今年度にかけて、泉鏡花の小説『神鑿」(明治42)を対象として、主人公である彫刻家が作品に生命を吹き込むという命題に囚われ執着しながら、それを断念することでしか救済されないというジレンマに着目して考察を加えた。特に、そのような芸術観や生命観について、幕末維新期から大正期に至る造形芸術における理念の変遷と比較しながら、一つの作品解釈にとどまらない歴史的観点から考察を加えて論じた。 また、同作家のほか明治期の文芸と絵画をめぐる相関関係について、それぞれをめぐる批評言説も対象として検討を進めている。今年度は特に、明治初期の洋学思想についての文献調査も注力した。加えて、明治初期の翻訳文学や翻訳にまつわる議論についても検討を加え、近代文学の初発期における写実思想や言文一致運動への展開に関与した内実や意義について考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度までに、①幕末・明治期の彫刻作品や人形、人形を用いた見世物興行に付随する一次資料について、海外の博物館・美術館も含めて実施調査を行うとともに、②新聞・雑誌記事による見聞記をはじめとする二次資料の読解を進めたうえで、③幕末から明治期の文学言説について調査を行い、④当該時期における写実思想の交差に関する考察をまとめる準備として、文学と造形における写実思想の差異と類似を把握して中間報告を行う予定であった。 しかし、①について新型コロナウィルスの感染拡大のために資料の観覧や聞き取り調査が困難なうえ、移動そのものが困難な状況が続いており、思うような活動ができていない。本課題の最も重要な作業にあたる部分であり、本来は①を基盤にして考察を深めるのが望ましいところであるが、この状況が改善しない場合を想定しながら、②③の文献調査を中心に進めつつ、④一部の成果を発表したところである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画から大きく修正を余儀なくされたものの、これまでの調査活動の成果から、文献調査においても検討すべき資料が多く残されていること、また幕末から明治の造形という点では、絵画作品や写真等の動向をより丁寧に検討することが必要であると考え、具体的な調査活動を少し変更しながら考察を進めてきた。しかし、特に①に関連した国内外での出張調査が可能な状況になってきているので、本年度は機会を逃さずに本課題の根幹をなす調査の遅れを挽回したいと考えている。
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