研究課題/領域番号 |
19K00380
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02020:中国文学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
中川 諭 立正大学, 文学部, 教授 (20261555)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 三国志演義 / 三国英雄志伝 / 三国志伝 / 簡本 / 版本研究 / 版本 / 簡本系 / 出版文化 |
研究開始時の研究の概要 |
従来『三国志演義』の版本について、清代の毛宗崗本成立以降はこの本が流行しその他の版本は淘汰された、と考えられていた。しかし実際は、毛宗崗本成立後も数多くの『三国英雄志伝』が刊行されていた。だとすると、『三国英雄志伝』はむしろ重要な版本群なのではないか。そこでこの『三国英雄志伝』諸本を取り上げて、その分化の過程と流行の状況、そして『三国志演義』諸版本の中における『三国英雄志伝』の位置づけを考える。
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研究実績の概要 |
本年度は、『三国英雄志伝』に関わる『三国志演義』の簡本系版本として、中国の個人蔵書家張頴傑氏所蔵の『三国志伝』・九州大学附属図書館所蔵の『三国志伝』・ドイツ・ベルリン州立図書館所蔵の鄭喬林本『三国志伝』・立正大学図書館所蔵の『三国志伝』を取り上げ、学会発表を行うと同時に研究論文を公表し、以下のことを明らかにした。張潁傑氏所蔵『三国志伝』は、明刊本の劉興我本と密接な関係にあるが、直接の継承関係にはなく、並列の関係にあり、また明刊本よりも古い様相を保っている。九州大学附属図書館蔵『三国志伝』は、簡本「志伝グループ」に属する本で、そのうち黄正甫本に最も近いが、黄正甫本と継承関係なのではなく、並列の関係にある。鄭喬林本『三国志伝』は、康熙二十三年の刊行で、簡本「英雄志傳グループ」の中の「先繁後簡」小グループに属して比較的遅い時期の版本であるが、ある部分では『三国英雄志伝』の比較的古い様相を留めていて、それらの部分は繁本二十四巻系と一定の関係にあると考えられる。立正大学図書館蔵『三国志伝』は、万暦三十八年書肆羅端源勤有堂の出版である。そして天理図書館蔵本と同版であるが、天理図書館蔵本で欠落している序文や本文が立正大学蔵本では欠落していないため、天理図書館蔵本の欠落を補うことができるだけでなく、立正大学図書館蔵本の存在により、天理図書館蔵本の刊行年・出版書肆名も明確になった。 以上4本のうち、張頴傑氏所蔵本と鄭喬林本は『三国志伝』と題していながらも、「英雄志伝グループ」に属する版本である。九州大学所蔵本と立正大学所蔵本は「志伝グループ」に属する簡本系版本である。グループは異なるとはいえ、この両本の成立を考察することをとおして、「英雄志伝グループ」の成立過程、さらには簡本系版本の成立過程を考察することに向けて、大いなる示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて、中国やヨーロッパ各国に蔵される版本の調査を行うことができなかった。そのため、中国首都図書館所蔵の『三国英雄志伝』や、中国国内で新たに発見された『三国英雄志伝』諸本、そしてイギリスロンドンの大英博物館所蔵の『三国志伝』などの調査ができておらず、予定より研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて行えなかった海外に蔵される『三国英雄志伝』版本の調査を行う。特に首都図書館所蔵の『三国英雄志伝』や個人蔵書家の張青松氏・張潁傑氏が新たに入手された新発見資料は、できるだけ早く調査を行い、論文執筆を行いたい。主要な『三国英雄志伝』諸本それぞれについての研究を終えたところで、引き続き残本、特に1~2巻程度しか残っていない残本について、完本あるいは残本でも大部分が残っている版本との比較において、それらがどのような性質を持つ版本であり、『三国志演義』諸本の変遷過程の中でどのようなところに位置づけられるのかを考察する。そしてそれらを総括して『三国英雄志伝』についての見解をまとめ、本研究の最終的な結論を導き出す。
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