研究課題/領域番号 |
19K00409
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
一谷 智子 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (70466647)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 気候変動 / 核汚汚染 / 植民地主義 / 先住民 / 難民 / 詩 / 小説 / 視覚芸術 / オーストラリア / エコクリティシズム / 環境と文学 / 戦争と環境破壊 / ポストコロニアル・エコクリティシズム / 核汚染 / 先住民文学 / 環境文学・芸術 / 環境批評 / オーストラリア文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、エコクリティシズム(環境批評)の成果を取り入れ、オーストラリア文学と視覚芸術における環境表象を考察する。人間と環境の関係を見直し、持続可能な社会を実現することが喫緊の課題となっている今日、本研究は、オーストラリアの文学や芸術における独創的な思考実験を考察することで、国内外のエコクリティシズム研究への貢献を目指すとともに、地球環境の未来について配慮を深め、人間中心主義的価値観の転換を促すために、文学が担う社会的役割と可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究においては、2019年度から2021年度にわたって、エコクリティシズムの研究手法を用い、オーストラリア国内における環境文学や視覚芸術を考察してきた。特に、植民地主義や戦争、核兵器による環境の破壊をポストヒューマンの視点から描いた小説をはじめとし、近年注目を集める気候変動をめぐる小説や詩作品を中心に分析を進めてきている。 本年度は、昨年度に引き続き、オーストラリアのオセアニア地域への覇権とネオコロニアリズムの状況において書かれた、クルド人難民作家であるBehrouz Boochaniの小説_No Friend but the Mountains_の研究ならびに日本語への翻訳作業を進めた。Boochaniがクルド人としての先住民的視点と難民としての経験から人間と自然環境、さらにはオーストラリアの植民地主義の問題を描き出していることへの考察を深めた。 また、オセアニア地域へと視点を広げ、核実験と気候変動の影響を世界でもっとも受けている国の一つであるマーシャル諸島の詩人Kathy Jetnil-Kijinerの詩についての研究論文を発表した。この研究論文をさらに発展させ、Jetnil-Kijinerの詩集_IEP JALTOK_を翻訳した図書『開かれたかご』(みすず書房)を出版しすることができたのは、今年度の大きな研究成果である。 このほかにもオーストラリアの芸術祭での調査を1週間かけて行った。また、共同研究者とのオンライン研究会で数回研究の進捗状況について発表を行い、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年の後半では3年ぶりに渡豪し、現地の図書館やアデレード芸術祭で研究調査を行うことができたが、この数年はコロナ禍の影響で、申請時当初計画していた現地調査が叶わず、計画は全体的に遅れている。また予定していた作家の日本への招聘も叶わなかった。日本国内でできる研究を進めてきたが、申請当初の予定を変更せざるを得ない状況が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
Behrouz Boochaniの小説_No Friend but the Mountains_の翻訳を進め、詳しい解説を附した図書を明石書店から刊行する予定である。さらにBoochaniの作品がオーストラリア社会に与えた影響を検証し、特に気候変動をはじめとする環境問題をテーマに作品を発表してきた先住民の劇団マラゲクによる新作で、Boochaniの_No Friend but the Mountains_の影響を受けた作品についての分析を進める。環境正義の視点からマイノリティの立場に置かれてきた人々が社会的排除や格差、環境やエネルギー・資源の問題解決に向けて、変化を起こす行動主体となっている様を明らかにしてゆく。国内外の研究会や共同研究者と出版予定の共著を通して研究成果を発信していく。
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