研究課題/領域番号 |
19K00412
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
境野 直樹 岩手大学, 教育学部, 教授 (90187005)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ルネサンスと近代科学 / 自然科学と錬金術 / 宗教と科学 / 英国ルネサンス / 科学と俗習 / 裁判記録とスキャンダル / 疑似科学の修辞 / 王立協会 / 文学的虚構 / 近世初期文学論 / 文芸と科学 / ルネサンス詩学 / 18世紀 |
研究開始時の研究の概要 |
「客観的な事実をありのままに伝えようとする」言説、換言すれば「科学的合理主義の言説」さらには「ノンフィクション」の成立以前の混沌にあって、 虚偽の言説がいかにして成立し、流通し、浸透し、分節され、循環し、最終的に排除されるのか、科学の言説と文芸の言説の「棲み分け」はどのように生起したのか、この問いについて文学の側から詳述的な考察を行う。ある意図によって自覚的に書かれる「虚偽記述」を、(1)事実との隔たりの解読、(2)虚偽記述のテクノロジー(技巧的、思想的両面における)の分析、および(3)それらが同時代の解釈公共圏に及ぼした影響関係の諸観点から論じることで、フェイクニュースの精神史を考察する。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、COVID-19による移動の制限ゆえに英国に渡航しての非言語テクスト、具体的には図像、彫刻、絵画などの精査に著しい制限を余儀なくされた。かかる事情による一次資料の立体的な視座からの検証にいささかの不足があるものの、「近代科学」の枠外へと排除されてゆく言説のなかに、すくなからず精神史的文脈、とりわけギリシャ古典から継承された諸要素が、同時代の科学的探求が追いつかない分野においてむしろ積極的に引用、解釈、領有されている様子を看取することができたことは大きな収穫であった。 具体例として、John Donne, Biathanatos, (1608)では自然科学と神意の間に理性を位置づけることにより、科学と信仰のせめぎ合いが前景化されつつ、宗教的禁忌とされる自死の問題が論じられる。科学が巧みに信仰と対比・相対化される文学的意匠については、今後さらに内容・形式の両面から精読を重ねたいと考えている。Donneの文章は散文、韻文を問わず、一般にきわめて難解であるが、いわゆる形而上学的思考を跡づける文体や語彙の使用に際して、意図的に当該語彙のラテン語源への参照が含意される点はきわめて重要と考えられる。 疑似科学・似非科学の当時における立役者としてSimon Forman (1552-1611)が当時の言説空間に与えた影響は極めて大きい。占星術、生理学、オカルトなどきわめて広範な彼のテクストをつぶさに検証することで、古くはE.M.W. Tillyard, Elizabethan World Picture (1959)が描いたルネサンス期の(衰退しつつあった)「科学」諸領域への具体的なアクセスが可能となり、近代科学の黎明期の混乱を一次資料の横断的な読解によってたどることもまた可能となった。このことについても次年度の研究にまとめたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19に付随した移動の制限により、渡英しての非言語的研究対象物(図像、立体形象、建築など)のリサーチの困難さに直面したことから、研究範囲を電子データを活用しつつ、言語記号のレベルに絞り込むことで、それまで想定していた計画の変更を余儀なくされたことと、それに付随して一次資料の読解にあらたな方法論的視座が設定できそうであることが判明し、そのことについて新規にリサーチの範囲を設定することが必要となったことから、研究をまとめるための範囲・対象・分量がかなり広がってしまった。このことにより、当初計画よりも研究に時間を要することがあきらかとなったため、全体的な進捗状況としては、「やや遅れている」と自己判定せざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究については当初予定していた非言語的記号(図像、立体形象物、建築等)の現地調査は割愛し、言語的一次資料、それも製版・公刊されたものに絞り込んで研究し、その成果をまとめることとしたい。 その場合においても、表舞台から抑圧されていった伝承や疑似科学については、その性格故に活版印刷を媒介としない史料が相当数存在し、それらのリサーチが不可欠であることも、ここまでのリサーチで判明していることから、当該史料へ具体的にアクセスできる海外の研究者の業績へのアクセス、さらに当該研究者とのコンタクトなどをふまえて、当初計画に照らして不足が懸念される領域の補完に万全を期したいと考えている。
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