研究課題/領域番号 |
19K00431
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
貞廣 真紀 明治学院大学, 文学部, 教授 (80614974)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | ハーマン・メルヴィル / ヘンリー・デイヴッド・ソロー / ウォルト・ホイットマン / アメリカ文学史 / F. O. マシーセン / アメリカ西部 / 東欧 / 環大西洋文化交流 / オスカー・ワイルド / 地方新聞 / 批評史 / ロバート・ルイス・スティーブンソン / 社会主義 / ラファエル前派 / ウィリアム・モリス / イラストレーション / アメリカ文学 / 文化 / 環大西洋批評空間 / 知識人 / 世界文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は1880 年代から1920 年代にアメリカで「文化」(culture)の概念がどのように形成され、それがどのように文学史の形成に影響したかを考察するものである。急速な移民の増加や流通ネットワークの形成によって多様な文化が流入する中で、アメリカの知識人たちは国民が共有すべき「共通文化」を規定し、文化階級の固定化を試みた。その中で古典文学が聖別され、文学史が編纂され、アメリカ文学が学問として制度化された。本研究は、大西洋を挟んで流通した複数の雑誌における英米知識人の批評活動を横断的に精査することで環大西洋批評空間を再構成し、英米の「文化」意識の共有と拮抗や、文学史生成の背景を記述する。
|
研究実績の概要 |
本研究はアメリカの世紀転換期における「文化・教養」の意義の変遷を調査し、それがどのようにアメリカ文学史の形成に影響したかを考察するものである。本研究の独自性は「古典アメリカ文学」形成期におけるジャーナリズムの影響を踏まえる点、知識人の環大西洋的な活動の射程を重視する点にある。2023年度はソロー、ホイットマン、ホーソーン、メルヴィルの受容過程に注目して研究を行い、その成果を発表した。 (研究成果1)2022年6月、米国メルヴィル学会国際大会にて、ハーマン・メルヴィルの遺作のイギリスにおけるオペラ・アダプテーション作品の制作過程について分析し、口頭発表を行った。アメリカ文学史の形成過程における環大西洋批評交流の問題系を世紀転換期から1950年代に展開して考察を行うことができた。 (研究成果2)2022年9月、1920年代のメルヴィル・リヴァイヴァルについての論文が掲載された共著が出版された。 (研究成果3)2022年10月、日本ソロー学会年次大会にて、ヘンリー・デイヴッド・ソローとウォルト・ホイットマンの自然観について考察を行い、揺籃期のプラグマティズムに隣接するホイットマンの態度がF. O. マシーセン以前のアメリカ文学批評とどのように接続するかを論じた。 その他、以下の調査・研究を行なった(成果の公開は2023年度を予定)。まず、ジュリアン・ホーソーンの活動に着目し、ナサニエル・ホーソーンの遺族としての彼の文筆活動が、中等教育及び大学で教材として用いられた文学史にどのように関与、影響したか、またその結果としてナサニエル・ホーソーンのキャノン化がどのように進行したかについて検証を行い、論文を執筆した(出版は2023年度)。また、プラハのカレル大学でアメリカ文学についての資料収集を行い、F. O. マシーセンの晩年の活動に関する調査を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度終了時の段階で、最初に予定していた検証項目についての考察はおおむね完了していたが、前年度までの渡航制限のために一次資料収集が遅れたため、2022年度は調査対象となる作家を増やし、より大局的な視座から検証を重ねた。それによって、<アメリカン・ルネサンス>作家たちがキャノン化される際、何がその条件となってきたのか、またその位置付けの背景にどのような論争があったのかをケース別に検証することが可能になった。 ジュリアン・ホーソーンの活動に着目した調査では、世紀転換期のニューイングランド中心のアメリカ文学史の形成のプロセスを再検証し、アカデミズム主導の文学史が親族が暴露する伝記に対して抵抗の姿勢を見せていたこと、また、その拮抗の中で「作家としての」ホーソーンの地位が確立されてきた可能性を示した。また、ウォルト・ホイットマンの南北戦争後の散文作品についての研究を通じて、ホイットマンが「自然」をアメリカ的主題として提示する中で、自らをニューイングランド文学者たちと関係づけてきたこと、また、彼の「自然」に対する両義的な態度が、20世紀初頭の文学者たちのプラグマティズムをめぐる思想的関心と呼応したために、彼の後期作品が評価の対象となっていた可能性を示した。 アクセス可能な一次資料の検証を通じて、ここまでの研究で作品、作家の伝記、ジャーナリズムが文学史の形成にどのように関与してきたか、マシーセン以前のアメリカ文学史の形成過程の実相を多角的に検証することができたが、2023年度は渡航調査を行い、補足資料の収集と国内外で成果発表を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度同様、2023年度も一次資料調査を継続して行うことで内容のさらなる具体化を進めるとともに、国内外で研究成果発表を精力的に行う。 具体的にはまず、2022年度に口頭発表を行ったソローとホイットマンについての調査をまとめ、論文執筆を行う。また、ヨーロッパにおけるアメリカ文学の受容とアメリカの側の文学史形成の連動的関係の重要性が再認されたため、カレル大学で資料収集を行なったが、その検証を行い、2023年度に開催される国際学会でF. O. マシーセンの晩年の活動について口頭発表を行う。その検証の段階で必要があれば大英図書館等で資料収集を行う。また、メルヴィル作品のイタリアにおける受容とイギリスにおけるアダプテーション作品の関連について検証し、2024年度3月開催のアメリカ文学会東京支部例会で考察を発表する予定である。
|