研究課題/領域番号 |
19K00435
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹村 はるみ 立命館大学, 文学部, 教授 (70299121)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 法学院 / シェイクスピア / 諷刺 / 喜劇 / 中傷詩 / 祝祭 / 近代初期英文学 / エリザベス朝 / ジェイムズ朝 |
研究開始時の研究の概要 |
法学院が英文学の発展、とりわけエリザベス朝末期からジェイムズ朝にかけての文学作品の革新的な変化に果たした役割の重要性は従来より認識されてきたにもかかわらず、その実態に関して体系的に考察した研究はいまだ海外でもほとんどなされていない。本研究では、法学院という極めて閉鎖的な共同体が宮廷や商業劇場といった外の共同体と密接な関係を構築していた点に着目し、法学院生による活発な文芸活動が、既に進行していた宮廷文学から市民文学への変化を加速させ、以後英文学の主軸となる諷刺文学の台頭の契機となったプロセスを文化史的に跡づける。
|
研究実績の概要 |
本年度はウィリアム・シェイクスピアの悲劇『ハムレット』を法学院をバックボーンとして胚胎された新しい諷刺文学の方向性と関連づけて分析を行い、法学院の文芸活動が商業演劇に与えた影響を明らかにした。16世紀末から17世紀初頭にかけて、競合関係にある詩人たちが作品を通して相手を罵倒する風潮が生じた。俗に「詩人戦争」あるいは「劇場戦争」と呼ばれるこの現象は、法学院を一つの磁場とした中傷詩の流行と連動している。近代初期における誹謗中傷の格好のメディアは、エピグラム、バラッド、そして演劇だった。中傷詩と総称されるこれらの作品群は、諷刺文学の変容との関連で、近年新たな批評的関心を集めている。本年度の研究では、1601年のエセックス伯蜂起の前夜、宮廷、そしてエセックス伯と交流のあった法学院を発信源とする誹謗中傷合戦がロンドンのそこかしこで繰り広げられる中で執筆された『ハムレット』には先鋭的な諷刺文学の傾向が見られることに着目し、エリザベス朝末期に顕在化した都市文学の系譜に本作品を位置づけた。 また、昨年度に引き続き、シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』の研究にも従事し、本作品の言語的特性の一つとなっている誹謗中傷をエリザベス朝末期の諷刺文学の変容という文化史的背景を踏まえて分析し、編註作業を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により、イギリスへの調査出張を実施できない時期が続いたため、法学院祝祭の実態に関するアーカイブ調査に著しい遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
法学院と商業劇場の双方向的な影響関係を精査すべく、法学院生との交流で知られる劇作家ベン・ジョンソンの諷刺喜劇を精査する。ジョンソンは仮面劇や称揚詩を数多く手がけたこともあり、絶対王政のスポークスマンとして位置づけられがちだが、それはジョンソンの創作活動の一面に過ぎない。活動時期の初期に執筆された諷刺喜劇は反体制主義的傾向が強く、その背景にはジョンソンが当時親交を深めていた法学院の急進主義的なサークルの影響が認められる。ジョンソンの喜劇と法学院の文芸活動の影響関係を検証することにより、同時代に胚胎された新しい諷刺文学の特性を考察する
|