研究課題/領域番号 |
19K00441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
川田 潤 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70323186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 個人の欲望 / 共同体 / 原子論 / ユートピア / 長い18世紀 / 主体 / 科学 / ルクレティウス / 翻訳 / 古典受容 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は初期近代に再発見された原子論が、その後、「長い18世紀」において近代的主体と共同体をめぐるユートピア言説に与えた影響について学際的に研究を行うものである。この時期、原子論の本格的な受容により、神と切り離された人間と世界の関係性についての考察が社会・文化の様々な分野で深められていくが、その過程で、人間の肉体性・物質性をどのように受容するか、人間が世界をどのように認識するかが問題となる。本研究は、このような原子論の浸透の結果、これまでとは異なる社会制度のあり方が模索され始める状況に注目し、新しい主体、共同体を、近代国家という枠組みと同時にグローバルな広がりの中でも探るものである。
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研究実績の概要 |
本年度は これまでの「長い18世紀」のユートピア言説を原子論と共同体言説の結びつき、及び、 原子論の観点から主体言説の分析を行い、原子論が浸透する時代におけるユートピア言説の変容・多様化の過程を明らかにした。具体的には、主に原子論が普及する中で、個人の欲望がどのような形で表象されているのか、それが共同体・国家をめぐる言説とどのような関係を結んでいたのかを、いくつかのテクストを用いて研究を行った。 第一に、17世紀末から18世紀初頭に生きたリーズの古物蒐集家にして王立協会フェローともなったラルフ・ソーズビーが蒐集欲という形でいかに自己を成型していったのかを、その日記を用いて分析を行い、個人の欲望が地域共同体(そして、国家)の「理想的な」アイデンティティの形成と結びついていく過程を明らかにした。 第二に、18世紀のニュージーランド近辺をめぐる架空旅行紀『ボウマン旅行紀』をとりあげ、同時代の蒐集家にして王立協会会長ジョゼフ・バンクスという人物表象(評価と批判)と結びつけて、蒐集という個人的欲望が、商業・貿易に基づく「理想的な」共同体言説と結びつく(不)可能性について明らかにした。 以上のテクスト分析から、17世紀後半に否定的な形で言及されることが多かった原子論に基づく個人の欲望が、18世紀になるにつれて変化し、それを肯定的に捉える可能性が問題化されていく過程、すなわち、個人の欲望を「理想」国家の利益にいかに回収するかを模索する過程を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった具体的なテクスト分析を行い論文化することができた。一方で、原子論の新たな可能性についての理論化の作業について若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、文学テクストだけではなく、長い18世紀における科学言説・原子論のテクストまで範囲を広げて分析し、-1) 原子論のテクストをユートピア的観点から分析し、更に、-2) 科学言説のテクストをユートピア的観点から分析する、という2つの方向から研究を行う。更に、原子論とユートピア言説の理論面の整理もし、本研究の総括を行う。
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