研究課題/領域番号 |
19K00480
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
初見 基 日本大学, 文理学部, 教授 (90198771)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 集団の罪 / 戦後 / ドイツ社会 / RAF / 戦後ドイツ / 戦後言説 / 罪意識 / 負の過去 / グループ実験 / 「罪と否認」 / 政治文化の変動 / 過去の克服 |
研究開始時の研究の概要 |
1945年の敗戦にいたる「負の過去」に対して,「無反省な日本と比べてドイツではよく反省されている」とは日本のジャーナリズムなどでしばしば指摘される。それはけっして誤りではないものの,ドイツでの実情もさほど順調に進んだわけではなかった。 本研究では,戦後間もない時期における「集団の罪」から,1960年代の「過去の克服」,そして1980年代半ば以降,とりわけ2000年代に入り活発化する「想起文化」といった諸議論がどのようなかたちでドイツ社会のなかで生まれたのかを,思想史,言説史の相で検討する。
|
研究実績の概要 |
2022年度においても、前年度に引きつづき海外渡航に制限があったためドイツ現地での資料調査を遂行することはかなわなかったものの、この間当科研費によって収集した資料の整理と分析を進めることに主眼を置いた作業はほぼ計画どおりに遂行された。 当年度研究の第一の重点が置かれている、戦後間もない時期のドイツ国内外での「集団の罪」をめぐる議論については、当時の雑誌掲載の文章を対象として、いかなる論調のなかでそれが扱われたかの確認が進められた。具体的には、1945年11月に創刊されたDie Wandlung誌、1946年4月に創刊されたFrankfurter Hefte誌のほか、長い歴史をもつStimmen der Zeit誌、Neues Abendland誌なども含め、1946/47年当時の議論のひとつの中心だった「ドイツ人の罪」をいかに捉え、そしてそれにどう処することが主張されているか、という論点に即して、諸論考の検討が進められた。その暫定的な評価としては、おおむね狭義での「集団の罪」という概念、すなわち「ドイツ人」はひとしなみに「罪」を負っているとの把握そのものは峻拒されながらも、政治指導者等に限定されない漠然としたなんらかのかたちで「ドイツ人の罪」が暗黙の裡に前提とされたうえで論が組み立てられている、という様相が確認できた。 研究の第二の重点が置かれた、1968年以降の政治的激動のなかで「負の過去」がどのように論じられたか、という点に関しては、とりわけ1970年代初頭に政治的テロリズムとして現れたRAFに即したかたちで研究が設定され、その線に沿っての検討もなされたが、これについてはまだ暫定的な結論をくだす段階にはいたっていない。またそれと併行して、これまでほとんど邦訳等も存していない、RAFの公式文書の翻訳作業が進行中であり、その一部は2023年度中に公開される見通しである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度も海外渡航に一定の制限があったために現地での調査を断念せざるをえず、資料収集作業に関しては当初の予定から大幅に遅れている。 本研究の性格上、公刊されている書籍、雑誌を典拠とするだけでは不充分であって、諸資料をドイツ語圏の各種図書館、文書館、研究所、さらには古書店などで周到に探査して閲覧することが必須になるが、これについてはコロナ禍のもと過去3年間にわたりまったく進められていない。その意味では「やや遅れている」との評価を下さざるをえない。とはいうもののそのことでかえって、すでに収集してある資料の検討作業に限定・集中することとなり、上記「研究実績の概要」欄で示したとおりに、資料検討については順調に進められていると自己評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」欄で記したように、この数年ドイツでの資料収集ができなかったこともあり、2023年度にあってはこの間欠落を痛感せざるをえなかった資料をぜひとも現地で確認することを第一の目標とする。具体的には、1945年から1949年の四か国占領下にあったドイツ各地で占領軍によって編集・発行されていたドイツ語新聞(いわゆる「占領軍新聞」)各紙、同時期に次々と発刊された小雑誌、パンフレット類、そして1960、70年代に出されていた各種パンフレット類、これらを確認することが焦眉の課題となっている。 資料の分析については、従来通りに読解、検討を進める。2022年度までの作業を継続してゆく方針に変わりはない。具体的には、第一には、占領下ドイツにあっての「ドイツ人の罪」をめぐる議論をさらに追って深化させ、これを総合的に鳥瞰・評価し論文としてまとめることを目指す、第二には、1968年以降1970年代の政治的動乱のなかでの「ドイツ人の罪」問題の扱われ方を、埋もれている資料を発掘しつつ広範に確認する作業をつづける、という二点が中心となる。
|