研究課題/領域番号 |
19K00483
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
瀬戸 直彦 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30206643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 写本 / トルバドゥール / テクストの欠損 / 作品校訂 / 物語 / ダウデ・デ・プラダス / クレチヤン・ド・トロワ / ギラウト・リキエル / イヴァンまたは獅子の騎士 / 写本の欠損 / 写本の付け足し / フラメンカ / 中世フランスの物語 / 抒情詩 / 欠損 / テクストの不在 / 『フラメンカ』 / フランス / オック語 / 中世 |
研究開始時の研究の概要 |
鞣皮紙写本における欠損部分は,作者ないしは写字生による写本成立時からのもの(故意の白紙など)のほかに写本を構成するの人々が受容する間に毀損したり改変したりしたものがありうる。本研究では,南フランスのオック語によるトルバドゥール写本(抒情詩写本)のなかで,とくにCとRと名付けられているものについての欠損部分の研究を行う。 さらに,抒情詩ではなく,唯一の写本に残された『フラメンカ』という物語における欠損を詳しく研究してみる。巻頭・巻末の欠損,途中の切り取り,読者の羞恥心によるものか,大胆な削り取りなど,さまざまのテクストの「不在」がありうる。そのもつ意味を考究してみたいと考えている。
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研究成果の概要 |
中世オック語作品の写本における欠損部分の研究を,13世紀の南仏の物語『フラメンカ』を題材に行った。聖職者であろう不詳の作者による作品は唯一写本に残されているが,冒頭と末尾の数葉が脱落しており,途中においても当時としてはショッキングな描写が数行削られ,さらに作中のラブレターが消失している。それらの欠損の意味を探ろうと試みた。そしてそれらの欠損の原因となったらしい「心性」を主として羞恥心の観点から迫ろうとした。 また,最近の語彙研究から,物語の作者に擬せられることもある聖職者ダウデ・デ・プラダスの作品について作者の恋愛観をよく示す一作品を,C写本から校訂して解釈をほどこしてみた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
現代において中世フランスのテクストに接する場合は,伝承媒体である写本を校訂して活字におこしたものを利用することになる。しかし,写本のマテリアルな状況はその場合,等閑に付されてしまう。南仏の物語『フラメンカ』を題材に,写本のさまざまな欠損を検討し,合わせてダウデ・デ・プラダスの抒情詩を校訂・分析することで,この物語の「心性」を体現しているであろうトルバドゥールの恋愛詩の本質に迫ることができたかと思う。そして,写本の欠損がけっして偶然によるものではなく,作品伝承の過程での種々の操作により生じたものであることを多少とも明らかにできたかと思う。
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