研究課題/領域番号 |
19K00496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 立教大学 (2021-2023) 新潟大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
吉田 治代 立教大学, 文学部, 教授 (70460011)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | エルンスト・ブロッホ / エルンスト・トレルチ / 近現代ドイツ思想 / コスモポリタニズム / 自然法思想 / 近代ドイツ思想 / 亡命研究 / ドイツ思想史 / ドイツ文学 / 日独比較 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ブロッホの1930~40年代の亡命期におけるテクストを、「世俗=世界的批評」という観点から読み直す。その際、マルクス主義信奉が際立つような哲学的大作ではなく、時事評論やエッセイなど、周縁化されてきた〈小さなテクスト〉に注目し、歴史批判的文献学的調査を行う。また、戸坂潤らとも比較対照させ、マルクス主義が果たした批判的役割を再検討し、日独知識人による「ソ連型マルクス主義に対する読み替えのダイナミズム」の可能性を探る。「フォルクスフロント」論など、ソ連マルクス主義とは一線を画す議論から、ブロッホの思考の「世俗性」を、故国を離れ移動するなかで執筆されたテクストから、その「世界性」を解明する。
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研究実績の概要 |
1)コロナ禍などによりドイツ出張ができない状況が続いていたが、本課題に取り組んで以降初めてドイツで資料収集、研究者との意見交換を行なった。ルートヴィヒスハーフェンにあるエルンスト・ブロッホ資料館では、未見であった一次資料を調査した他、最新の二次資料についても情報収集を行なった。さらに当地で日独のブロッホ研究者との意見交換の機会を得た。他にも、若きブロッホに少なからぬ影響を与えた同世代の芸術家/思想家であるフーゴ・バルの資料館を訪れ、現地の研究者に、バル研究の現状などについてインタビューを行った。 2)昨年度に引き続き、ブロッホの自然法思想とエルンスト・トレルチとの関連について調査を進めるべく、今年度は、このテーマに関わるトレルチの一次文献、二次文献の収集と読解にさらに注力した。これにより、若きブロッホがその磁場にあった、第一次世界大戦前の「ハイデルベルク精神」の重要性を認識できた。さらに、昨年度は十分に扱えなかった、トレルチの『キリスト教の社会教説』がブロッホの『トーマス・ミュンツァー』に与えた影響を解明し、これを、2024年3月に新潟大学で行われた国際シンポジウムにてドイツ語で発表した。 3)2021年に設立された日本エルンスト・ブロッホ研究会による初めての対面研究会を、同代表中村徳仁氏(テュービンゲン大学/京都大学)の科研(「ヴァイマル期ドイツの終末論が与えた政治的影響にかんする思想史的研究のための基礎構築」、課題番号23K18625))との共催という形で、2024年3月に立教大学にて実施した(発表者は、小田智敏氏、秋田市太郎氏、石田喜嵩氏)。『希望の原理』、『唯物論問題』が主に論じられたが、本研究が取り組むブロッホの自然法論の解明という観点においても重要な示唆を得た。また、日本におけるブロッホ研究の推進という点で、画期的な一歩を踏み出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の影響により、ドイツでの資料調査をようやく2023年度に初めて実施することができた。さらにもう一年の延長が認められたため、最終年度である2024年度にはまだ十分に取り組めていない、日独比較対照研究にも注力したい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、9月にチューリヒ大学で開催される、「第三の国」をテーマとするシンポジウムに参加する。このテーマは初期から後年に至るまで一貫してブロッホに見出されるが、本科研において取り組んでいる彼の自然法論ともリンクさせて研究を進め、ドイツ語にて発表する。また、ブロッホと同時代の日本の思想における「世俗=世界的批評」について、できる限り当該研究者とも連携しつつ調査を進めたい。
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