研究課題/領域番号 |
19K00497
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京大学 (2023) 金沢大学 (2019-2022) |
研究代表者 |
平松 潤奈 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60600814)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ロシア文学 / ソ連文学 / 検閲 / ドストエフスキー / 社会主義リアリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ロシア帝国とソ連の4つの時期の検閲体制が、当時の文学テクスト生産をどのように条件づけたのか、その構成的機能の変遷を考察するものである。そのために、「懲罰/自己懲罰ナラティヴ」をもつ文学作品テクストと、それに関連する検閲資料を分析し、人間主体(作家や登場人物)の心的メカニズムに備わる検閲・自己懲罰機能と、社会が有する外在的検閲・懲罰機構との連続的・対話的関係を明らかにしていく。
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研究成果の概要 |
本研究は、テクスト生産を禁じるのではなく促す構成的検閲という観点からロシア・ソ連文学の検閲を考察した。帝政期には、19世紀後半の大改革期の部分的検閲緩和により、逆説的にも作家の自己検閲が強化され、検閲機能が作品内容に取り込まれ、自己懲罰的主体の形成が語られたことを、ドストエフスキー作品を事例に論じた。またソ連公式文学では、主人公の身体の自己破壊という外的暴力のプロットの産出が作家に内面化されるが、こうした内的検閲から生まれた身体表象がさらなる外的検閲を呼び込むという、内的・外的検閲の循環を論じた。さらに、上記のような暴力表象と検閲の関係が、ロシア・ソ連の植民地主義に関わっていることも考察した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
一般に、西欧リベラル民主主義社会には検閲は存在せず、それに対して権威主義社会では厳しい政治検閲があると理解されているが、そうではなく、あらゆる社会において、私たちは外的・内的検閲の相互作用を介して発話やテクスト生産を行なっている、という本研究の認識は、社会的意義をもつと考える。また本研究が論じたロシア・ソ連に特有の自己懲罰的な構成的検閲は、現在のロシア=ウクライナ戦争下のロシアの検閲状況の理解にも有効だと思われる。現状を単なる政治権力による国民弾圧とみなさず、国民による公式言説(自己犠牲的暴力の促進)の内面化として理解し、より深いレベルで検閲を理解することが可能になるからである。
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