研究課題/領域番号 |
19K00500
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 群馬県立女子大学 |
研究代表者 |
井村 まなみ 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (60315695)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | フランス象徴主義 / 日本近代詩 / 写真 / 顔 / 肖像 / ランボー / ヴェルレーヌ / 萩原朔太郎 / 肖像画 / 日本語翻訳 / 近代化 / 詩的言語 / 表象 / フランス詩 |
研究開始時の研究の概要 |
ヨーロッパにおける写真技術の急速な発展は、フランス象徴主義詩人の活動と時期を同じくする。「名刺判サイズ(6×10)」の普及は画期的であり、人々は廉価で自他の「肖像」を入手、自他の「顔」を掌握することが可能となる。事情は、フランス象徴主義の影響を受けた日本近代詩人にとっても同様だ。本研究は、これまでテーマ批評の「身体性」では回避されてきた「顔」の表象を通して、フランス象徴主義詩と日本近代詩を読み直し、詩的言語と近代化の関係を追究する。「顔認証」を人間個人の照合に用いる現代にあって、「顔」という表象の文化的意義と社会的変遷を明確にし、合理化によって失われるのは人間の何なのかを問う喫緊の課題を扱う。
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研究成果の概要 |
本研究は、近代化の大きな指標である「顔写真」の普及がフランス象徴主義と日本近代詩に与えた影響を明らかにするため、詩に表される「顔」「肖像」の表象を探ることから始められ、萩原朔太郎とアルチュール・ランボーの作品をこの観点から考察した。ついで、詩の隣接分野である「小説」に於ける「写真」の影響と「肖像」の表れ方へと視座を広げ、フロベールの作品分析及び同時代の詩作品との比較を行うことで共通性を探った。さらに、フランス象徴主義と日本近代詩の交流として、ヴェルレーヌの初期作品が20世紀前半の日本でどのように翻訳されたかを検証することにより、日仏の詩的言語の問題点を浮かび上がらせることに成功した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
文学研究において、「顔」という表象がテーマ批評の「身体性」から逃れる対象であったのは、身体の一部とするには複雑な機能を持つからであった。本研究は、先行研究が回避する問題に正面から切り込み、仏日の詩的言語の特性をこの観点から考察したことで成果をあげ、隣接分野である「小説」へと視座を広げ、「顔」や「肖像」の隠し持つ問題を明るみに出した2点で、学術的意義を持つ。今日の社会で個人の識別に「顔写真」が用いられ、機械による「顔認証」が進んでいるのは周知の通りである。「顔写真」の普及し始めた時代に、詩や小説がどう対置したか考察することは、現代社会を生きる個人の問題を照らす指針になる点で、社会的意義を持つ。
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