研究課題/領域番号 |
19K00505
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
博多 かおる 上智大学, 文学部, 教授 (60368446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ヘテロトピア / 境界 / 異なる空間 / 詩情 / 19世紀フランス文学 / バルザック / ジョルジュ・サンド / 隣接 / 19世紀フランス小説 / あわい / 併置 / 異時間 / 庭 / 離れ / オノレ・ド・バルザック / 語りの構造 / 温室 / コレクション / 鏡 / 地図 / フランス文学 / 船 / 賭博場 / 舞踏会 / サロン / 記憶 / 感覚 / 空間 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀文学作品において、墓地、船、監獄、娼家、賭博場、一部の商業施設、動物園、公園などは、社会制度の中に存在し、修辞的基盤を転換したり、空間の整合性に亀裂を入れたりするとされる「ヘテロトピア」の役割をしばしば担っていると考えられる。バルザック、ジョルジュ・サンド、フローベール、モーパッサン、ゾラなどの作品におけるこうした場所に焦点を当てることにより、ヘテロトピアを作ったり消去したりする集団の特性を再考するとともに、ヘテロトピアが促す記憶や感覚のもつれ、時空の読み替えなどを吟味し、その社会的、文学的射程を考察する。
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研究成果の概要 |
ミシェル・フーコーが定義した「ヘテロトピア」の概念を参照しつつ分析することにより、バルザックやジョルジュ・サンドの作品をはじめ19世紀フランス小説における空間・時間の性質に新しい光を当てた。複数のヘテロトピアが連関することで小説の潜在的な主題が浮き彫りにされる。異なる空間と異なる時間が連携することで他の場所に視線が送られ、過去の様々な層が掘り起こされる。ヘテロトピアが周囲の空間とつながったりそこから切り離されたりする独特なシステムは、想像力や情報の流れ、語りの仕組みと結びついて小説を展開する。さらには、隣接する異なるものの関係性が問われることで小説に独特な詩情が生まれることを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
さまざまな社会階層、都市とさまざまな地方を描こうとしたバルザックの小説にあって、それぞれの空間の内部で「異なる」部分と他の場の関係が、小説の根底的な主題を読み解かせたり、全体における異質なものの連関を示唆したりすることを示し、新しい視座を提供することができた。また19世紀の小説における、性質の異なる空間の境界性に着目することによって、小説的な詩情が生まれる契機、小説が想定する人間世界の空間構成について重要な仮説を立てることができた。ヘテロトピアはあらゆる社会にも存在し、誰もが体験しうるものである。本研究で展開した場と想像力についての考察は、現実社会の空間についても応用されうる。
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