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アルノー『頻繁な聖体拝領』(1643)生成再考:サン・シラン書簡新配列に基づいて

研究課題

研究課題/領域番号 19K00506
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02040:ヨーロッパ文学関連
研究機関武蔵大学

研究代表者

望月 ゆか  武蔵大学, 人文学部, 教授 (30350226)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードサン・シラン / アルノー / ポール・ロワイヤル / パスカル / ジャンセニスム / ヴァンセンヌ城 / 『頻繁な聖体拝領』 / 頻繁な聖体拝領
研究開始時の研究の概要

『頻繁な聖体拝領』(以下『頻繁』)(1643)は、獄中のサン・シランの書簡による指示のもと弟子アルノーが執筆し、フランス・ジャンセニスムの源となった重要な著作である。短期間で書かれた一枚岩の著作とされてきたが、実は2度の軌道修正を経て現在見る形に至ったのではないか。さまざまなポール・ロワイヤル一次資料の批判的検証と年代推定から出発し、従来直接的関係が指摘されてこなかった論争的関連書にも触れながら、作品の生成過程と意味について通説を塗り替えることを主眼とする。研究期間終了後にフランスで著作として出版することが最終目標である。

研究実績の概要

ヴァンセンヌ城に囚われていたサン・シランの待遇は1641年7月から改善され、彼の最後の牢獄はルイ13世の王館内の旧女王用の寝室(当時は王の補助寝室)であったことを2022年度までに突き止めた。イエズス会が自分たちに不利なこの情報を隠蔽したのは当然だが、ポール・ロワイヤルの歴史記述も沈黙を守ったのは、サン・シランが著作可能な状況にあったことが公になれば、「サン・シランの格率」というパンフレットで危険思想の持ち主であると攻撃されていたポール・ロワイヤルの指導者が『頻繁な聖体拝領』の真の著者であり、従って本作品も国家転覆の意図を秘めているものであるという噂を補強してしまうことを恐れたためであった。2023年度は以上について、『プロヴァンシアル』をめぐる17世紀日仏研究者による共同研究(zoom開催)の場で、フランス語で発表した。
サン・シラン死後2年目にアルノー・ダンディイが友人の正統性の証左として編纂・出版した『霊的・キリスト教的書簡集』第1巻(1645年)所収の二信について、日付が改竄されていることを発見した。これらは、明らかに警備が最も厳重だった第二の牢獄、すなわち聖堂参事会員用居住域時代のものであるが、どちらも1641年7月より後の日付となっている。サン・シランの『霊的・キリスト教的書簡集』編纂時にオリジナルが破棄されたことはよく知られているが、「殉教者」である彼の書簡は聖遺物に近いものであり、証拠隠滅と『頻繁な聖体拝領』における「悔悛」の教義を擁護するために、やむをえず取った処置ではないかと推測される。
サン・シランの最後の牢獄の歴史記述から明らかなように、論争の歴史記述では両陣営が別々の思惑から意識的に沈黙し、結果的に誤った内容が史実として伝承される場合がある。2023年度はこの知見をパスカルの『プロヴァンシアル』第一から第三信の著者性に応用した研究に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

2023年度前半は、岩波文庫のパスカル『小品と手紙』(塩川徹也・望月ゆか共訳)ゲラ校正作業、9月初めのパスカル生誕400年記念シンポジウム「パスカルとポール・ロワイヤル」(パスカル研究会主催・日仏哲学会共催)での発表「第一の回心期におけるパスカルの霊性」準備に追われた。
加えて、2023年6月半ばに重度の難治性眼病にかかり、手術後の疼痛も年度末近くまで続いたため、研究が中断された。このため、サン・シラン牢獄に関するフランス語論文のフランス本国への投稿準備が進まず、それに続いて投稿予定の邦訳発表も滞っている。

今後の研究の推進方策

1)ヴァンセンヌ城におけるサン・シランの牢獄についてのフランス語原稿を整理し、国際誌XVIIe siecleに投稿する。量が多すぎて拒否された場合は、Chroniques de Port-Royalに2号に分けて投稿する。
2)上記研究の日本語原稿を大学紀要に2号に分けて投稿する。
3)9月に予定されているProjet Pascal Les Provinciales, Reunion de chercheurs franco-japonais, presidee par Yasushi Noroにおいて、サン・シラン書簡研究で得られた知見を利用し、『プロヴァンシアル』前半について、とりわけ第一から第三信の著者性ならびに第四信とそれ以降の意図について、フランス語で発表する。
4)共編者である『パスカル読本』(法政大学出版局)への投稿論文の一つとして「パスカルとポール・ロワイヤル黎明期三部作」を執筆する。
5)アルノー・ダンディイがサン・シラン『霊的・キリスト教的書簡集』編纂の過程で行なった日付の操作の明らかになった分について『武蔵大学人文学会雑誌』に投稿する。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「第一の回心期におけるパスカルの霊性」2024

    • 著者名/発表者名
      望月ゆか
    • 雑誌名

      『武蔵大学人文学会雑誌』

      巻: 55-2 ページ: 63-90

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Keisuke MISONO, <i>Le Jansénisme. Religion et politique dans la France moderne</i>, Presses de l’Université Keio, 2020 (en japonais)2023

    • 著者名/発表者名
      Yuka Mochizuki
    • 雑誌名

      <i>LITTERA</i>

      巻: 8 号: 0 ページ: 52-55

    • DOI

      10.20634/littera.8.0_52

    • ISSN
      2424-0842, 2432-3160
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 望月研究プロジェクト実施報告書「サン・シラン『改悛論』の生成と構成」2022

    • 著者名/発表者名
      望月 ゆか
    • 雑誌名

      武蔵大学総合研究所紀要

      巻: 30

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 望月研究プロジェクト実施報告書「ポスト・トリエント公会議的文脈におけるポール・ロワイヤルの原罪・情欲論」2021

    • 著者名/発表者名
      望月ゆか
    • 雑誌名

      武蔵大学総合研究所紀要

      巻: No. 30

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 中世ヨーロッパの霊性史における情動性2019

    • 著者名/発表者名
      セドリック・ジロー(訳・解題 = 津崎良典・望月ゆか)
    • 雑誌名

      思想

      巻: 第1141号 ページ: 44-63

    • NAID

      40021890382

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 「第一の回心期におけるパスカルの霊性」2023

    • 著者名/発表者名
      望月ゆか
    • 学会等名
      パスカル生誕400年記念シンポジウム「パスカルとポール・ロワイヤル」(パスカル研究会主催・日仏哲学会共催)(於 大阪大学豊中キャンパス)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] "Les prisons de Saint-Cyran"2023

    • 著者名/発表者名
      Yuka Mochizuki
    • 学会等名
      Projet Pascal Les Provinciales, Reunion de chercheurs franco-japonais, preside par Yasushi Noro
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 「ヴァンセンヌ城におけるサン・シランの牢獄:歴史記述から隠されたもの」2023

    • 著者名/発表者名
      望月ゆか
    • 学会等名
      パスカル研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] パスカル『恩寵文書』の歴史的文脈2020

    • 著者名/発表者名
      望月ゆか
    • 学会等名
      第1回恩寵勉強会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] トリエント公会議第5総会(1546)原罪(その1)2020

    • 著者名/発表者名
      望月ゆか
    • 学会等名
      第2回恩寵勉強会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] パスカル『小品と手紙』(塩川徹也・望月ゆか共訳)2023

    • 著者名/発表者名
      ブレーズ・パスカル
    • 総ページ数
      566
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784003361450
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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