研究課題/領域番号 |
19K00512
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
村山 功光 関西学院大学, 文学部, 教授 (20460016)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | グリム兄弟 / イメージ学 / メタファー学 / 文化学 / ロマン主義 / イデオロギー / 近代批判 / メタファー / 市民社会 / ジェンダー / ゲーテ / ドイツ・ロマン派 / 美術史 / 翻訳 / 文化的記憶 / 記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
グリム兄弟の文献学を〈記憶〉の問題として捉え直し、〈文化学〉の視点と手法で明らかにする。 彼らは、伝承は口承性・集合性の点で恣意的変更を許容しない〈精確な〉記憶保存力を有し、古代からの〈文化的記憶〉を保持していると考えた。そして衰退から救った口頭伝承を、近代において特に女性を通じて〈再生〉しようとした。そこには、女性を〈自然に近い性〉および子どもに接する身体として表象するジェンダー観、国民アイデンティティーを強化する〈文化的記憶〉のカノン化、人為的創作(Kunst)に対する自然(Natur)の優位を視覚化するイメージ的思考、またこれらが〈学術性〉に支えられているなどの問題がある。
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研究成果の概要 |
グリム兄弟の思想を、従来の精神史的・系譜学的研究ではなく〈文化学的〉手法で追究した。すなわち、①兄弟の思考の原動力となっているイメージ群を分析し、②兄弟が活動を始めた1800年期およびそれ以前の18世紀における、それらのイメージをめぐるさまざまな分野(医学・考古学・政治・教育など)のディスクールとの連関を解明した。具体的には、『グリム童話集』扉絵の〈老農婦〉肖像画群と兄弟の民衆観・民間伝承観の形成との相関関係、伝承文芸の受容を〈授乳〉のイメージで捉える思考と18世紀以降のイデオロギー的な〈母乳ディスクール〉との関係、民間伝承を〈発掘する〉イメージと当時の考古学(ポンペイ、恐竜)の関係である。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、従来のように精神史的・系譜学的な〈線状〉の影響関係を追うのではなく、グリム兄弟の思想をイメージ(メタファー)と言説の相互作用の相で捉え、連想が四方に拡張する動的変化として捉えている。兄弟の思想の養分となるイメージ群の分析、およびそれらが同時代の知や社会的現象とどのように関連し合っているかに着目する研究は、全く新しいと言える。 本研究は、グリム兄弟を扱うケーススタディーの枠を越えて、一般に思想形成におけるイメージ的思考の意義・メカニズムを探る一つの手立てを示しうる。イメージと思考の発展的相互作用は、デジタルメディアでイメージが氾濫する現代のイデオロギーや社会現象の解読にも示唆を与える。
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