研究課題/領域番号 |
19K00531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
上倉 あゆ子 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (70467520)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 北欧 / スウェーデン / 子ども文化 / ラジオ・テレビ / メディア / 子どもの権利 / ラジオ放送 / 子ども番組 / 児童文学 / テレビ・ラジオ / こども / こどもの権利 / こども文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「こども文化」においてスウェーデンのラジオ放送が果たしてきた役割を概観・解説した上で、インターネットが普及した今日におけるこども向けラジオ番組のあり方を検証し、スウェーデンではいかにしてラジオが「こどもの視点に立ったメディア」として成立しているのかを分析するものである。 スウェーデンにおいては「子どもの権利条約」を前提とした考え方が広く普及しており、こどもも含め誰もが豊かな文化活動を享受できることへの多様な取り組みがなされている。本研究では、こどもの権利保障・擁護の視点から見たスウェーデンのラジオ放送の特色を解明し、今後のこども文化発展に対する示唆を得ることを目指している。
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研究実績の概要 |
2023年11月にスウェーデンでの現地調査を実施し、主としてスウェーデン王立図書館を訪問し、研究対象としている作家Gunnel Lindeに関する資料・情報の収集を行なった。王立図書館のアーカイブにGunnel Lindeの自筆メモや手紙、制作に関わったテレビ・ラジオの番組脚本等の貴重な資料が保管されていることがわかり、それらの閲覧を進めた。その中で、Lindeがかなり早い段階からラジオ・テレビ番組制作時に子どもの権利や多様性を意識した内容を盛り込んでいたこと、子どもの安全な生活のために行政や関係機関に問い合わせをする番組制作をしていたことなどが判明し、スウェーデン児童文学関係の文献からのみでは得ることができなかった情報を入手することができた。資料からは、LindeがAstrid Lindgrenや他の著名な作家、児童養護に関わる研究者などと精力的にやりとりをし、子どもの権利擁護に繋がる番組や作品のアイディアを次々に出していたこと、様々な方策でその理念を一般社会に浸透させる道を探っていたことが明らかとなった。 王立図書館の視聴覚ブースでは、Lindeがプロデューサーを務めたり自ら進行役をしていた番組の一部を視聴することもできたが、それらを通しても、今日の日本から半世紀以上先んじて、「子どもの権利」がスウェーデンの(子ども)文化の中で目を向けられていたものであることが確認された。Lindeは、今日では「忘れられつつある」と形容されることが多い作家だが、スウェーデンの子ども文化において果たしたその役割の大きさについては、再評価されるべきであろうと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では3年間で複数回の現地調査(資料情報収集)を実施する計画となっていたが、これまで2022年および2023年の2回にとどまっている。海外出張が可能な時期や期間にも制約があることから、スウェーデンラジオでの資料収集も実施できておらず、まだ不十分な部分がある。また、学内業務および家庭の事情もあり、得られた情報の整理については2024年度に進める予定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年11月の現地調査では、作家Gunnel Lindeに関する貴重な情報が得られた。Lindeが関わった番組でどういった内容が盛り込まれていたかはたいへん興味深く、スウェーデンの子ども文化について考察する上で、決して無視することのできない存在であることが確認された。子どもの権利擁護において大きな役割を果たしたLindeについては、2024年度中に一度論考をまとめ、発表できる方向で進める予定である。2024年度中にもう一度現地調査を実施し、スウェーデンラジオSR(もしくはスウェーデンテレビSVT)において、「子どもの権利」意識と関わる放送の歴史に関して、更なる情報を得たいと考える。 2024年度は課題の最終年度となるため、2023年度までの現地調査で得られた情報をさらに補完する形での資料収集等を行ない、これまでの成果を形にする作業を進展させたい。
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