研究課題/領域番号 |
19K00546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
吉枝 聡子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20313273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 言語学 / 記述言語学 / イラン語派 / パミール諸語 / ペルシア語 / イラン諸語 / ワヒー語 / 東イラン語 / ゴジャール / フンザ / 少数言語 |
研究開始時の研究の概要 |
1)ゴジャール・ワヒー語を中心とした,ワヒー語下位変種間の文法形態上の差異を詳細に記録した上で,格標示システムを中心とした形態上の相違の実態を明らかにする。2)同じく下位変種間で異なる文法形態を示すクルド語について,特に格標示を中心に,その中間形も含めて精緻に記録する。3)上の事例から,両言語の変種間に認められる形態・構造上の差異についての類似点を抽出し,「ペルシア語化」との関連性より考察する。4)イラン諸語における言語構造上の通時的変化について,上の考察結果を援用して考究を続け,5)可能であれば,一連の成果を,類型論的視座に立った,アラインメントに見られる変化モデルの一事例として提供する。
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研究実績の概要 |
2022年度は,2020・21年度にコロナウイルス感染拡大により実施を見合わせた,パキスタンにおける現地調査(夏期)を再開することができた。具体的には,1)ゴジャール・ワヒー語の主要村落(グルミット)における,当該言語に関する調査,および,2)イシュコマン・ワヒー語に関する言語調査,を行った。このうち2)は,パキスタン側ワヒー語の下位方言間の比較を目的としたもので,イシュコマン・ヤスィーン地域(パキスタン・ギルギットバルティスタン州,ゴジャール・ワヒー語の南西に位置)に分布するイシュコマン・ワヒー語を対象とした調査である。当初はイシュコマン地域での現地調査を予定していたが,8月のパキスタン豪雨により現地が被害を受けたため,実踏調査は見合わせた。その代わりとして,ゴジャール・ワヒー語分布村落に在住のイシュコマン・ワヒー語の話者の協力を得てインフォーマント調査を行い,基本データを収集した。 当調査から得られた成果は,上記2)のイシュコマン・ワヒー語に係るデータから,格標示システムに認められるワヒー語下位方言間の相違とその分析結果について,論文として発表した。またゴジャール・ワヒー語については,今後の研究成果の公表の準備として,語彙 データの整備と再確認作業を行った。 なお,昨年度は,イラン側クルディスターン地域における,クルド中央方言群および南方言に関する調査を,現地のコロナウイルス感染状況を考慮しつつ行う予定であった。しかしながら,イランでは,コロナ感染拡大の懸念要素に加え,昨年8月にクルド人女性のヘジャーブ着用に端を発する大規模な情勢不安が生じた。特に反政府運動がクルディスタン地域で拡大したことから,現地の治安状況等を考慮し,調査の実施については見合わせるを得なかった。このためクルド語については,次年度以降に繰り越しとする調査に向けての準備作業を,主に文献ベースで行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り,パキスタンにおけるワヒー語に関する言語調査は再開でき,データ収集とその成果の発表を行うことはできた。一方でクルド語については,対象地域であるイラン側クルディスタンににおいて予想外の反政府運動が拡大し治安状況が悪化したため,現地調査によるデータ収集とそれに伴う分析作業が実施できなかった。このため,特にクルド語に関する研究作業については計画よりやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
ワヒー語に関する分析作業については,今後も現地調査または関連研究者との研究連絡等を行いながら,引き続き作業を進めていく。クルド語については,2023年5月現在,イラン国内の治安状況は徐々に改善しつつあるとの連絡を受けているため,調査地への渡航および調査が可能であると判断され次第,再開を検討する予定である。ただし状況によっては,調査期間の短縮や,調査実施自体の検討をしなくてはならない可能性もある。この点については,調査対象地域および調査項目等の再検討や,さらなる研究計画期間の延長も視野に入れて,柔軟に対応していきたいと考えている。
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