研究課題/領域番号 |
19K00561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 (2022) 南山大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
斎藤 衛 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (70186964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | フェイズ / 転送領域 / 比較統語論 / 極小主義アプローチ / コピー形成 / カートグラフィー / ラベル付け / 焦点 / 制御 / phi素性一致 / 言語普遍性 / wh句 / 名詞修飾節 / 転送 / 使役文 / 適正束縛効果 / NP移動 / 局所性 / 照応形束縛 / 名詞句移動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本語を中心とした比較統語研究を通して、極小主義統語論の根幹をなすフェイズと転送領域の定義の精密化をめざすものである。まず、照応形束縛の局所性に基づき、転送領域をphi素性一致の有無に言及する形で再定式化する。次に、この再定式化をふまえて、日本語の分析において長らく問題とされてきたCP境界を越える主語繰り上げ、使役文の単文的性質、NP移動と非A移動の適用による適正束縛効果などに分析を与える。また、制御の移動分析とフェイズ理論を調和させることもめざす。本研究は、日本語の類型的特徴に注目しつつ、比較統語研究を通して一般理論に貢献するものであり、他言語研究者との共同研究が重要となる。
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研究実績の概要 |
本プロジェクトの4年目に当たる2022年度は、研究成果公表のための作業を中心に行った。フェイズと転送領域に関する2021年度の研究をまとめた論文“On Minimal Yield and Form Copy: Evidence from East Asian Language”を GLOW in Asia XIII (アジア理論言語学会、香港中文大学、2022年8月7日、オンライン) にて、ワークショップ基調講演として発表した。この論文は、修正後に専門誌 The Linguistics Review (Mouton de Gruyter, Berlin) の特別号に掲載される予定である。また、日本語Wh句の焦点解釈を論じた論文“Wh-phrases as Genuine Focus Operators”に修正を加えて、論文集 Rich Descriptions and Simple Explanation in Language Structure and Acquisition (Oxford University Press, Oxford) に収録される最終稿を出版社に提出した。 ラベル付け理論に関する研究も継続して行い、成果を国立台湾師範大学 (2022年7月23日、Distinguished Speaker Series、オンライン)、日本英語学会 (2022年11月6日、第40回大会特別講演、オンライン) にて発表した。後者の要旨は、JELS 40: 131-132に掲載されている。本年度は、プロジェクトのフェイズ理論およびラベル付け理論に関する成果を詳細に説明する著書の執筆に、最も多くの時間を割いた。約250ページの草稿が完成しており、最終的な修正を加えた後に、開拓社より最新英語学・言語学シリーズ第1巻『生成統語論の成果と課題』として刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本プロジェクトの4年間の研究で、当初の見込みを大きく超える成果を得ている。フェイズと転送の理論については、以下の作業仮説の帰結を追究した。 (1) Cとv*に加え、C、v*からphi素性を受け継ぐT、Vもフェイズ主要部とする。(2) フェイズが完成した時点で、下位のフェイズが解釈部門に転送される。 この仮説が、照応形束縛に見られる日英語の相違のみならず、日本語使役文の一見矛盾を孕むように見える性質にも説明を与えることを示した。また、Noam Chomsky氏の『言語研究』掲載論文 (2021年) で提案されている制御のコピー形成分析および併合に係るMinimal Yieldを仮定しつつ、制御の局所性や長らく問題とされてきた適正束縛現象における日英語の相違も仮説の帰結として導かれることを示した。 関連するテーマであるカートグラフィー研究でも、大きな成果を得た。本プロジェクト以前の研究で、すでに日本語がイタリア語とほぼ同様の文周縁部構造を有することを論じていたが、日本語に焦点の投射があるか否かが、問題として残されていた。本プロジェクトでは、日本語におけるWh句の分布について新たなデータを提示しつつ、Wh句が非顕在的に焦点句指定部に移動して解釈されるとする分析を提案した。この分析は、日本語Wh句の統語分析とHamblin意味論に基づく意味分析を統合するものであり、日本語において焦点投射が存在すること、また、その帰結として、日本語の文周縁部構造がイタリア語と同一であることを含意する。 研究成果の公表も、著書や論文の執筆、学会でのオンライン招待講演などを積極的に行ってきた。ただし、口頭発表のための学会出張やコネティカット大学Zeljko Boskovic教授との共同研究はコロナ禍の影響で延期している。これらは、プロジェクト期間の延長が認められたので、2023年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、プロジェクトの延長期間であり、2022年度と同様に、研究成果の公表を中心に作業を行う。 (1) 論文・著書:2022年8月のGLOW in Asia XIII で発表した論文“On Minimal Yield and Form Copy: Evidence from East Asian Language”を完成させ、最終稿を The Linguistics Review (Mouton de Gruyter, Berlin) 特別号に提出する。また、本プロジェクトの成果を、前提となる理論の解説を含めてまとめた著書『生成統語論の成果と課題』を完成させ、開拓社から刊行する。 (2) 口頭発表:韓国 Modern Grammar Society (2023年5月20日、オンライン)、 Workshop on Altaic Formal Linguistics (2023年9月27日-29日、国立モンゴル大学) にて、招待講演を行う。また、メリーランド大学言語学科のワークショップ May Fest 2023 (2023年5月5日-6日)、コネティカット大学言語学科のコロキュアム (2023年9月の予定) でも、研究発表を行う計画である。 新たな研究としては、延期してきたコネティカット大学 Zeljko Boskovic教授との文構造とフェイズ理論に関する共同研究を実施する。加えて、広範な言語変異理論を構築しつつあるケンブリッジ大学 Ian Roberts教授の研究グループと共に、本プロジェクトの成果を同理論の中に位置づける可能性について考える予定である。
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