研究課題/領域番号 |
19K00562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
竹安 大 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80585430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 促音 / 長音 / 特殊拍 / 知覚 / 鹿児島方言 / 音節 / 後続母音 / 産出 / アクセント / シラビーム方言 / 音声産出 / 音声知覚 / 持続時間 / 若年層 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、シラビーム方言における音節の時間制御の特徴を明らかにすることを目的とする。シラビーム方言の一つである鹿児島方言の促音とそれに隣接する母音持続時間を対象として、(a) 音声の産出・知覚の両面からの分析、(b) 世代間の比較(若年層・高年層)、(c) モーラタイミング方言や日本語以外の言語との比較の3つの観点から多角的に分析を行い、シラビーム方言の音節の時間制御の特徴を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
これまでの実験結果から得られた促音の知覚に関する知見をどの程度まで拡張して可能であるかを明らかにするため、前年度から準備を進めていた促音以外の特殊拍の知覚や、隣接要素の母音の質の影響を明らかにするための知覚実験を実施した。 子音の有声性に関する判断は、先行母音の持続時間に影響されることが知られているが、日本語のように母音に音韻的な長短がある言語においてこの先行母音持続時間の影響がどのように表れるのかについては、音声産出面での検討は行われているものの先行研究間で一致した見解がなく、さらに知覚実験に基づく議論はほとんど行われていない。この点について知覚実験を実施したところ、母音の音韻的長短に関わらず、子音の有声性判断に対する先行母音持続時間の影響が観察されることが明らかとなった。また、子音の有声性は先行母音の音韻長の知覚にも影響を与えることが明らかとなり、隣接する母音・子音間で双方向の影響が存在することが示された。また、音声知覚に加えて音声産出面からも分析したところ、子音の有声性によって先行母音の持続時間の分布が異なっていることも明らかとなった。これは、音声産出と知覚が対応するという運動理論等のモデルの主張と矛盾しないものであると同時に、音声知覚における隣接要素間での双方向的影響や音声産出・知覚の対応関係が促音以外の特殊拍にも確認されることを示すものでもあった。 また、促音に関連する音節の時間制御に関して、母音の質がどの程度影響するかを明らかにするための実験も行った。その結果、促音に先行する母音と後続する母音では母音の質の影響の現れ方が異なることが明らかとなった。今後、なぜこのような違いが生じるかについてより深く分析することにより、音節の時間制御に関して新たな知見が得られる可能性が示唆されたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に引き続き、今年度も当初からコロナ禍により特に鹿児島方言高年層に対する調査を行いにくいことが予想された。すでに前年度中から、音節の時間制御をより一般的な視点から説明できる方法を探るための方法論の検討を行って実験計画の一部修正をおこなっていたため、その流れを踏まえて引き続きより一般的な視点に基づく音節の時間制御に関する分析を実施した結果、査読付きの学術誌への論文掲載等、一定の成果をあげることができた。 コロナ以前に立てた当初計画を基準に考えると、鹿児島における調査が不十分であるなど実質的な進展がなかったことにはなるが、コロナ禍の間に新たに立てた修正版の計画に基づけば、これまでに得られた成果をもとに新たな着眼点に基づく実験・分析を実施することができ、そこから新たな知見が得られたこと、さらに、その知見に基づいて今後もさらに研究を発展させることができる見込みがあるなど、おおむね順調に進展していると判断できる。 以上のことから総合的に考えて、本研究課題は、当初の研究計画に照らしてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の実施期間は当初予定では2023年3月までであるが、コロナ禍で計画が遅れていたことを考慮して1年間期間を延長して行うこととなった。最後の期間では、これまでの実験結果を総括し、査読付きの学術誌への投稿を行う予定である。
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