研究課題/領域番号 |
19K00570
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
永井 崇弘 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (80313724)
|
研究分担者 |
塩山 正純 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10329592)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 漢訳聖書 / 非中国語圏 / ラサール訳 / マーシュマン・ラサール訳 / 文法的考察 / プロテスタント系漢訳聖書 / ラサール訳(1807) / マーシュマン・ラサール訳(1810、1822) / 『嘉音遵口罵口挑菩薩之語』の本文影印の公開 / 底本・漢訳背景・訳語の解明 / 早期の漢訳聖書 / プロテスタント最早期の漢訳聖書 / 1807年 / 漢訳者ラサール / マタイの福音書 / 書誌 / 底本 / 全文写真データの入手 / 最早期の漢訳聖書 / 訳語・文体の形成 / インドで成立 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の意義はこれまで未発見であった非中国語圏で成立したプロテスタント系漢訳聖書を見つけ出し、そこにある訳語と文体を解析・考察することにより、最早期のプロテスタント系漢訳聖書で、非中国語圏の印度で漢訳されたマーシュマン・ラサール訳における訳語と文体の形成過程の解明を行うことにある。この目的に附随して漢訳聖書本文の電子テキスト化、漢訳者であるラサール、マーシュマンの生い立ちや聖書漢訳の背景、ギリシア語底本の特定なども明らかにする。本研究では、研究代表者は研究全体を統括するとともに、その専門分野に鑑み、主として訳語(聖書用語)の解析・考察を行い、研究分担者は主として文体(文法)の解析・考察を行う。
|
研究実績の概要 |
2022年度の研究実績は、論文1編(永井崇弘,ラサール訳《嘉音遵口罵口挑菩薩之語》における並列関係を示す連詞の用法について,単著,2023年3月,関西大学中国文学会紀要第44号,1-15頁)と口頭発表3回(1.永井崇弘,「最早期プロテスタント系漢訳聖書における人称代詞について」,単独,2022年度第5回KU-ORCAS研究例会(第7回東西学術研究所研究例会)-言語交渉研究班-」、2022年12月17日、関西大学、2.塩山正純,「宣教師ネヴィアス夫人による中国語に関する記録について」、「2022年度第3回KU-ORCAS研究例会(第4回東西学術研究所研究例会)-言語交渉研究班-」、2022年10月28日、関西大学(オンライン併用)、3.塩山正純,「近代在華欧美女学者的“官話”観 以海倫・倪維思的回億録為主」、「東アジア文化交渉学会第13回年次大会」、2022年5月7日、韓国・啓明大学校(オンライン))である。特に研究代表者の口頭発表「最早期プロテスタント系漢訳聖書における人称代詞について」は、8月の渡英調査で発見したこれまで未見の1813年のマーシュマンとラサールによるヨハネの福音書の考察を反映している。また、論文「ラサール訳《嘉音遵口罵口挑菩薩之語》における並列関係を示す連詞の用法について」では、1807年のラサール訳における並列の連詞の特徴を使用頻度・順序から考察を行い、その特徴を解明した。これにより連詞1つのみの使用では、概ね「兼」を使用していること、また複数を同時に使用する場合、第1連詞には「兼」を使用し、次に「兼」、「及」、「與」、「並」を使用するが、「又」は使用しないこと、3つを使用する場合では「兼+及+兼」の順序と組合せが、5つの連詞の使用では「兼+與+及+並+又」の順序と組合せが存在していた。またこれらの用法が中国語母語話者の作品とは異なることも分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、非中国語圏で漢訳された最早期のプロテスタント系漢訳聖書であるラサール訳およびマーシュマン・ラサール訳の漢訳聖書における底本、翻訳背景、漢訳文の語彙、文法の各分野において総合的に研究を行うものである。2019年度ではラサール訳とマーシュマン・ラサール訳の底本の考察、2020年度では語彙(キリスト教用語、音訳語)と未見漢字の考察、2021年度では文法的観点から助詞の考察をそれぞれ行ってきた。本年度の2022年度ではさらに文法的観点から連詞の考察を行うとともに、コロナ禍のなか8月に渡英調査を行い、これまで未見であった新資料を発見し、写真撮影を行うことができた。この最新成果もふまえて、2022年12月に「最早期プロテスタント系漢訳聖書における人称代詞について」と題する口頭発表を行うことができた。これによりラサールおよびマーシュマン・ラサールによる複数の訳本の漢訳文を比較することが可能となり、これまでに比してより横断的、総合的な訳文・訳語の考察を行うことができるようになった。これらの2022年度の研究成果はコロナ禍によりインドでの文献調査が行えていないことを差し引いても、本研究課題における研究がおおむね順調に進展していると判断することができるものである。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施予定であったインドにおける文献発掘調査がコロナ禍の影響により実施できなかったが、2023年度ではインドにおいて漢訳聖書をはじめとする本研究課題に関連する資料発掘調査を行う。特に1800年から1854年までコルカタに存在したフォート・ウィリアム・カレッジ(Fort William College)の旧蔵書を中心に探索を行い、新たな漢訳聖書および宣教師資料の閲覧、収集につなげたい。さらに2023年度では、これまでの研究成果および収集した文献資料をもとに、非中国語圏で成立した漢訳聖書(ラサール訳、マーシュマン・ラサール訳)の漢訳文における文法的特徴のさらなる解明を行いたい。
|