研究課題/領域番号 |
19K00572
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安田 麗 神戸大学, 大学教育推進機構, 講師 (60711322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 複言語教育 / 音声習得 / 文字インプット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,複言語習得における言語間の類似性や干渉に着眼し,特に文字インプットと音声産出の関係について実証的に明らかにするものである.第三言語習得の研究では,言語間の文法面での類似性に注目したものが多く,先行研究の結果より言語間の干渉が示唆されている.さらに外国語習得におけるインプットの研究では,母語と目標言語の間でつづり字インプットが発音に与える影響の可能性を説いている.本研究は,これらの各分野での先行研究の知見を応用し,いまだ明らかになっていない第三言語習得における文字インプットと音声産出について実証的に明らかにし,日本の外国語教育の現状に即した音声指導教材を開発するものである.
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研究実績の概要 |
令和4年度はすでに行った予備実験の結果を踏まえ,発音課題に文字や絵を提示するのに加えて音声も提示することを検討し実験の準備を進めた.予備実験ではつづり字が学習者の発音にどのような影響を与えるかを調べるために,日本人ドイツ語学習者を対象に音声生成実験を行った.今年度は先行研究を再検討し,文字インプットの影響を考慮した発音課題をモデル音声と文字,絵をそれぞれ組み合わせて本研究に即するよう応用し,実験の準備を進めた.新たに作成した音声を加えた発音課題についても予備実験を行い,実験参加者を増やし学習経過を観察するための教材作成の準備を進める計画である. 令和4年度はさらにドイツ語の母音に焦点を当て,ドイツ語の円唇性の特徴を明らかにすることを目的とし生成実験を行い,知覚実験の準備も進めた.生成実験ではドイツ語の母音のうち円唇と非円唇の対立のある母音[i/y],[e/oe]の調音的特徴を明らかにするために,音声の収録とビデオ撮像を行った.これまでいくつかの言語について,母音の円唇性調音の特徴は,口の上下,左右の開きや口唇の前突,開口面積であると報告されている.しかし,ドイツ語と同様に母音の円唇,非円唇の対立がある中国語では必ずしも「口唇の前突」が必要ではないという指摘もある.そこでまずはドイツ語の円唇母音の調音についてどのような特徴があるかを明らかにすること,そしてそれらの結果をもとにウムラウトの発音指導に役立てることを目指した.生成実験で収集したデータは現在分析中である.知覚実験ではドイツ語の円唇,非円唇母音について,ドイツ語母語話者の音声と共鳴管の開口面積や形状の異なる人工音を使用し,それぞれの音声がドイツ語のどの母音に聞こえるかを判定してもらい,円唇性を決定づける重要な要素は何であるかについて調べる計画である.モデル音声の収録はすでに終え,知覚実験のためのプログラムを作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の進捗状況は当初の研究計画より遅れている.すでに行った予備実験の結果を踏まえ,令和4年度は更なる修正を加えた生成実験を日本人ドイツ語学習者を対象に実施する予定だったが,新型コロナウイルス感染症の影響により対面での学習指導や実験を予定通り行うことができず,新たな音声データの収集ができなかった.また同様に新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航ができずドイツ語母語話者による聴取実験も実施することができなかった.今後,状況が許す限り令和4年度に行う予定だった研究計画を遂行することに努め,日本人ドイツ語学習者を対象に継続的に学習効果を見るための学習実験を実施し,縦断的データの収集を行う.音声データ分析,ドイツ語母語話者による聴取実験も実施し学習者の発音が学習法によってどのように変化するかを観察する.得られた結果をもとに学習教材と学習効果の検証のための教材作成を進める.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,新型コロナウイルス感染症の影響で令和3年度に実施できなかった学習実験の実施と結果の分析,聴取実験の準備と実施を状況が許す限り遂行し研究の遅れを取り戻すよう努力する.具体的には,学習実験で日本人ドイツ語学習者を実験群と統制群に分け,予備実験で得られた結果をもとに作成した発音練習を行ってもらい,発音課題の音声を収録し,得られた音声データを音響分析する.さらにドイツ語母語話者による聴取実験を行い,発音の正しさや自然性の評価を行う.聴取実験のための音声サンプルの音響的妥当性の判断や実験参加者の募集について,研究協力者に助言と協力を求める.これらの実験は可能な限り対面で実施する予定だが,対面での実施が難しい状況の場合はオンラインや遠隔で実施できる方法を検討する.最終的には学習実験により得られたデータと聴取実験により得られた音声評価のデータすべてを総合考察し,研究の総まとめを行う.研究によって得られた成果を論文にまとめ上げ,投稿準備を進める.さらに,音声指導教材の開発を行い複言語教育のための効果的な指導法の開発へと発展させ,今後の研究に繋げていく予定である
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