研究課題/領域番号 |
19K00580
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
萩原 孝恵 山梨県立大学, 国際政策学部, 教授 (90749053)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | タイ人の笑い / 笑いの異文化 / 映像データ / フィラー / タイ人日本語学習者 / ベトナム人日本語学習者 / 日本語母語話者 / 舌打ち / 三者会話 / 日本人の笑い / タイ人 / 文化差 / オンライン会話 / 初対面会話 / 二者間会話 / 非言語行動 / 発話 / 笑い / 意味・機能 / 価値観 / フェイス |
研究開始時の研究の概要 |
「舌打ち」や「笑い」は通言語的であるにもかかわらず、そこには社会的・文化的・慣習的な用法が存在する。本研究は、定延(2005)のいう「口の中の文化」に焦点を当てる研究である。本研究が着目するのは、非言語行動としてタブー視される「舌打ち」と、特におかしくもないところで笑う不可解な「笑い」である。研究対象は、“日本語文化と異なる”タイ人およびベトナム人の「舌打ち」と「笑い」である。定延(2005)を援用すると「口の中の異文化」が本研究課題となる。本研究は、誤解や摩擦の要因となり得る「舌打ち」や「笑い」に注目し、自文化の物差しでは測れない、他文化の非言語コミュニケーション行動を紐解いていく。
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研究実績の概要 |
本年度の成果は4点である。 1.映像データの文字化作業終了。当該データは、2020年度に収集し、2021年度の完成を目指していた、日本語学習者と日本語母語話者による初対面二者間の会話データである。文字化したデータは、タイで日本語を学ぶタイ人と日本人の会話8本(532分)、日本で日本語を学ぶタイ人と日本人の会話8本(487分)、日本で日本語を学ぶベトナム人と日本人の会話10本(673分)、合計26本(1,692分)である。 2.タイ人の舌打ちに関する研究論文発表。これは、2021年8月に国際シンポジウムで発表、同年12月に投稿したものが、2022年6月に公刊されたものである。当該論文では、舌打ちが〈時間〉と〈モダリティ〉という2つの文脈の中で、どのように共起し、どのような意味で使用されているのかを、映像データを通してマルチモーダルに分析し、タイ人の舌打ちには日本語に存在しないコミュニケーション機能があることを指摘した。 3.舌打ちや笑いと共起性の高いフィラーに関する研究論文発表。これは、2021年3月にタイ国日本語教育研究会においてオンラインで発表した内容を発展させたものである。データは、国立国語研究所の「多言語母語の日本語学習者横断コーパス」(I-JAS)で、ベトナム人・タイ人・日本人のフィラーの使用傾向を記述した上で、フィラーによって表出される発話行動を可視化した。本結果が示す知見は、フィラーが舌打ちや笑いとなぜ共起するのかといった問題解明につながるものと考えている。 4.タイ人の笑いに関する研究進展。2021年度より、タイ人研究者2名とタイ在住の日本人研究者1名との共同研究を行ってきた。昨年度は日本映画にみられる日本人の笑いを検討したため、今年度はタイ映画にみられるタイ人の笑いを検討した。共同研究の成果として、2023年3月にタイ国日本語教育研究会にて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の通り、おおむね計画通りに進めることができた。 ・2020年度に収集した初対面二者間の会話データ26本、合計1,692分ぶんの文字化データを作成した。 ・タイ人の舌打ちについて、映像データを通してそのリアルな運用の仕方をマルチモーダルな観点から分析し、日本語に存在しない、タイ人の舌打ちの機能を論文で発表した。 ・ベトナム人日本語学習者・タイ人日本語学習者・日本語母語話者のフィラーの使用傾向と母語別特徴について、大規模コーパスを利用した調査を行い、論文で発表した。 ・タイ人研究者2名とタイ在住の日本人研究者1名との共同研究により、笑いの異文化に関する研究内容を、タイ国で開催された研究集会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
・日本映画やタイ映画にみられる「笑い」に着目し、タイ人研究者との共同研究をさらに進める。 ・「価値観」「フェイス」といった観点からの研究も進める。 ・コロナ禍の影響により、現地での対面による自然会話データの収集ができず、当初の計画通りに進めることができなかった部分については、すでに収集したデータを基に検討する。 ・ベトナムやタイ国で開催される研究集会に参加し、研究成果の発表や研究交流を行う。
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