研究課題/領域番号 |
19K00625
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢田 勉 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20262058)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 平仮名表記 / 片仮名表記 / 漢字表記 / 言語生活 / 文字生活 / 非中央語的方言 / 仮名 / 平仮名 / 片仮名 / 正訓字と仮名 / 表記史 / 表記体の交渉 / 字音漢字使用の基盤 / 字史 / 漢字 / 平安時代の日本語書記 / 中世の日本語書記 / 漢字文献 / 片仮名文献 / 平仮名文献 / 中世初期の文字生活 / 散らし書き / 三文字体系併用 / 表記史の総体的記述 |
研究開始時の研究の概要 |
前近代の日本語表記における漢字・平仮名・片仮名の三字種の関係性については、片仮名・平仮名の用途区分を中心に言及されてきたが、先行研究は、ある一時期のみを分析対象とするか、時代差を考慮せず一つの論理で説明しているために、その時代的変遷が分析されてこなかった。本研究計画は、そうした問題意識から、三文字体系併用についての史的記述の再構を目ざす。そのために、同時期成立の漢字文・片仮名文・平仮名文の例を時系列に沿って出来る限り多く収集した上で、各々の筆者や成立事情・内容などを踏まえて、なぜその表記体が選択されたのかを分析し、各時代における三体系の用途の相違と重なりとを明らかにし、その変遷を記述する。
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研究実績の概要 |
今年度も、未だ新型コロナウイルス感染症の影響があったため、当初の計画にあった他機関等所蔵資料の調査は原則として行わず、所属機関である東京大学内の諸処に所蔵される資料の調査や、公刊資料の調査、これまでに収集したデータの分析等を中心として研究を進めた。 本研究の骨子となる、仮名表記史と漢字表記史の交渉、平仮名表記史と片仮名表記史の交渉に着眼点を置いた、日本語表記史の通史的記述については、上代・中古・中世前期についてはひとまずの文章化をほぼ終え、その範囲の不足を補うと共に、その後の時代の記述に作業を移す段階にある。 そうした中で、今年度もいくつかの副産物的な研究成果を得た。資料の博捜の過程で、近世中・後期が中心であるが、近世前期以前の上方方言、近世後期以降の江戸方言といった中央語的方言以外の方言音声を文字化した資料を複数、見いだしたことである。具体的には、越後北部もしくは山形置賜地方の方言音声を反映したとみられる口説資料数点、金沢方言の談話資料1点である。これら資料からは、近世後期においてなお、非中央語的方言の文字化、特に表音表記化には大きな障壁があったことが明らかとなった。それは、改めて、日本語表記史において漢字表記が有していた必要性の強さを浮き彫りにするものでもある。また、本研究計画の範囲である「前近代」からは外れるが、昭和初期における新潟地方の文字教育・作文教育の実態に関わる重要資料も探り得た。ここから、近代中盤以降にもなお、表音文字による表記に困難を抱えた言語生活の実態が日本列島の少なくとも一部には存在していたことが明らかとなった。それらの資料に対する文字・表記史的分析は、2023年11月に開催予定のシンポジウムで公表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「概要」にも述べた通り、新型コロナウイルス感染症の影響で、今年度も他機関所蔵資料の原本調査に関してははかばかしい進捗を得ることができなかったが、それに代わって、入手済みおよび新規入手の資料の分析に時間を掛けることができた。 仮名表記史・漢字表記史およびその関係史のそれぞれに関して、上代・中古・中世前期に関わる記述は、文章かの完成に近い段階のものを成すことができた。近世・近代の過渡期および近代以後の表記史的変遷に関しては幾分かやり残された部分が存するが、新規資料の発掘によって、より新規性のある記述も見込めるようになったうえ、研究期間ないしその終了後比較的時間を経ない間には、その部分も含めたひとまずの完成が見込める段階である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いたこともあり、他機関所蔵資料の調査を少しく集中的に行いたい。 但し、本研究計画の終盤段階に入ってきたことでもあり、当初通りの計画には必要以上には拘泥せず、この状況下で最大限の研究成果が得られるよう、柔軟に研究方針の変更にも対応していく。具体的には、今年度同様、入手済みの資料からより深層的な事象を引き出すための分析に一層の注力をし、追加の資料調査については、そこから特に必要性が高いことの明らかになってきたものを優先的・重点的に行うなど、研究の効率化をより強く意識していく。
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