研究課題/領域番号 |
19K00636
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐々木 冠 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (80312784)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 形態音韻論 / ウ音便 / 母音短縮 / ラ行五段化 / 一段化 / 未然形 / 連用形 / テ形 / 動詞活用 / 形態語彙規則 / 不透明性 / 脚韻 / 不規則性 / 拡張コピュラ文 / 弱並列主義 / 地域差 / 日本語方言 / 母音融合 / 最適性理論 / 形容詞 / 音韻プロセス / 音韻的不透明性 / 促音 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語方言の形態音韻論における音韻プロセスの相互作用を記述し、その言語学上の意義を明らかにするため、調査と分析を行うとともに、辞書作成への支援を通して調査を通して地域社会に研究成果を還元し、得られたデータのデータベース化を進める。分析の対象とするのは音韻的不透明性を呈する音韻プロセスの相互作用が中心になるが、類推などの音韻論では扱えない形態論上の現象も扱う。
|
研究実績の概要 |
この研究プロジェクトの研究成果を1本の共著論文と2本の口頭発表で公にした。共著論文は関西地方の動詞の形態音韻論に関するものであり、口頭発表は2本とも日本語方言の形態音韻論全般を扱ったものである。【論文】佐々木冠・浜野拓夢(2023)「ウ音便と母音短縮(京都府京都市方言調査報告)」『北海道方言研究会会報』99: 16-20.この論文では関西地方の方言におけるウ音便と母音短縮の相互作用についての分析を展開した。【口頭発表】2022年4月8日から9日にかけて開催されたInternational Symposium on Japanese Studies, "Japan and the World -- Revisiting Cultural Encounters in the Global Era"において、基調講演としてThe decline of irregularity: What happens to the verb morphology in the Japanese dialectsと題する講演を行った。この口頭発表は日本語方言の形態音韻論において不規則性の衰退が生じているとする分析を展開したものである。また、このシンポジウムでは日本語動詞形態論に関するワークショップで「独立性のない語幹をどのように扱うべきか」という発表を行った。この発表は、未然形や已然形という独立性のない動詞語幹の形態論上の位置づけを論じたものである。 また、滋賀県大津市の方言の形態音韻論に関する調査を進めた。この調査の結果は2023年4月16日に開催される北海道方言研究会第237回例会で発表する予定である。この研究発表ではウ音便における短母音と長母音の交替が動詞では母音短縮として分析されるべきであるが、形容詞では母音延長として分析されるべきであるとする分析を展開している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の中にあってもオンラインでの学会・研究会開催が一般化したため、研究成果の発表は順調に進めることができている。2022年度はこの研究プロジェクトの成果を使って2本の口頭発表を国際学会で行うことができた。共著論文も1本公にできている。 しかしながら、調査には、制限があり十分に研究を進めることができていない。インターネット接続が可能な調査協力者にはZoomを介した調査を行っているが、そうではない方には調査ができていない。このような状態であるため、研究上必要なデータが得られることが期待される地域での調査を行うことができていない。これが、研究計画が遅れ気味である理由である。 2023年4月現在、様々な機関がBCPレベルの運用を停止しており、コロナ禍はほぼ終息したかに見えるが、2022年度中はコロナ禍の終息の目処が立たなかったため、コロナ禍の下でも広く調査を行うために、タブレットを介した面接調査の実験を計画した。校務の多忙により、検証実験を2022年度内に行うことができなかったが、この実験が成功すれば、調査協力者にインターネット接続の環境がない場合でも調査者と調査協力者が同じ空間にいないかたちで方言調査を実現できることになる。実験用の機材は揃えたので、2023年度の早い段階に実験を行い、調査の範囲を広げたい。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響と校務の多忙(2022年度末まで研究科長)により調査の進展が遅れているため、調査の遅れを取り戻すための工夫をする予定である。2023年4月現在さまざまな機関がBCPレベルの運用を停止してはいるものの、新型コロナの感染者自体は出ており、この研究プロジェクトにとって不可欠な高齢層の調査協力者にリスクがある状況には変わりがない。すこしでも、調査の際のリスクを軽減するために、タブレットを介した面接調査の実験を2023年度の早い段階に行い、2023年度中期以降の調査の活性化につなげたい。この実験は、調査協力者のいる部屋にモバイルWIFIでインターネット接続したタブレットを置き、調査者が別の部屋にいて、そこからインターネットを介して調査を行うというものである。 今年度はこの研究プロジェクトの最終年度でもあるので、研究成果を積極的に公にしていきたい。調査計画の遅れは今のところ挽回できていないが、現在あるデータをもとに発表や論文執筆も積極的に行いたい。また、日本語方言における形態音韻論上の交替現象のデータベース化も進めていきたい。
|